アーツ前橋で、廣瀬智央 “地球はレモンのように青い” 展を体験しよう!
ブルーボックス 2005 ミクストメディア 作家蔵
Photo, Movie, Text: Sugita Motohiro + Tranlogue Associates Inc.
1991年にイタリアへ渡って29年。さまざまな表現を駆使しながら、身の回りのものの新しい見方を提示してきた廣瀬智央(ひろせさとし)さんの、大規模な回顧展が開催されています。
テーマは両義性。相反する二つの意味を持つ事柄や、対立する二つの解釈が成り立つ事柄なのだそう。
メディアを通して次の暮らしをデザインするトランローグは、会場に廣瀬さんを訪ね、貧しさと豊かさ、天然と人工、アイデンティティと多様性などについて考えながら、見て・触れて・味わって、話を聞きました。
現実の空間や社会と一緒に展開し、完成されていく廣瀬さんの作品は、自分自身にも社会に対しても、とても肯定的で心地良く、“次の暮らしは、ものの見方、心のあり方ひとつで変えられる!”と前向きな気持ちにしてくれます。
会期 2020年6月1日(月)〜7月26日(日)48日間
開館時間 10: 00〜18: 00(入場17: 30まで)
休館日 水曜日
会場 アーツ前橋(JR前橋駅から徒歩10分)
主催 アーツ前橋
協賛 株式会社資生堂 株式会社原田・ガトーフェスタハラダ
助成 公益財団法人朝日新聞文化財団
公益財団法人アサヒグループ芸術文化財団
協力 ウンベルト・ディ・マリーノ・ギャラリー AGC株式会社
株式会社アート 株式会社虎変堂
株式会社ユニオン 桐生大学短期大学部アート・デザイン科
小山登美夫ギャラリー 高砂香料工業株式会社
横浜ディスプレイミュージアム
後援 イタリア大使館 上毛新聞 群馬テレビ FM GUNMA
まえばしCITYエフエム 前橋商工会議所
詳しくはこちらから
同時開催中の “奇妙な循環”展 小山登美夫ギャラリー(六本木)の詳細はこちらから
廣瀬さんの作品を鑑賞・体験するキーワードの1つが、旅。
イタリアやペルシャ(イラン)、その他さまざまな国や地域を移動することで発見した文化の違いや共通点は彼に、創作の視点、思考のきっかけを与えているようです。
身に染み付いた文化の呪縛から逃れ、境界を飛び越える自由な精神は、多様で複雑な物事の関係性を再認識・再構築していく上で、とても重要なのだとか。
世界は多様で複雑、変化するから面白い。そんな思いに溢れている廣瀬さんの作品を、会場に足を運んで体験しましょう!
このリポートでは、数多くの展示作品のなかから、一部を紹介しています。
下記の【動画】では、感覚的な体験、貧しさと豊かさ、物事は関係性によって成り立つこと、個人のアイデンティティと社会的共生などについて、廣瀬さんに語っていただきました。
リポートをご覧いただき、実際に会場を訪ね、圧巻の回顧展をお楽しみください!
1997年に銀座・資生堂のギャラリーで発表され伝説となった“レモンプロジェクト”を、さらにスケールアップして再現された展示を見ながら、“臭覚や味覚といった感覚的な体験の、精神的な豊かさ”などについて語っていただきました。
“マーレ・ロッソ”や“無題(豆の神話学)”などを見ながら、“人が関わって作品が完成する。物事は関係性によって成り立つこと”、“貧しさと豊かさ”などについて語っていただきました。
“家シリーズ”などを見ながら、“個人のアイデンティティと社会的共生”などについて語っていただきました。
アルレッキーノ 1998 布、釣り糸 パオロ・サボーナ・コレクション
イタリアでは、3色の3角形の小布を見れば、道化のアルレッキーノを連想するそう。展示会の入り口に吊るされた作品は、これから始まる廣瀬ワールドへと誘います。
地球はオレンジの実のように青い 2017(2008) モノクロプリント 作家蔵
タイトルは、詩人ポール・エリュアール(1895-1952)の詩からの引用。ガガーリンが地球の青さを発見する以前から、詩人は地球の青さを空想していたのか・・・今回の展覧会のタイトルのきっかけとなったそう。
無題 2020 紙、テープ、埃、木、ビニール 作家蔵
展覧会の準備中に出たゴミも作品になっているとか。視点を変えると、無用と思われているものも、必要で美しいものに見える。廣瀬さんが旅や人生から得た、自由な精神の強さと楽しさが伝わってきます。
無題 1997 テラコッタ粘土、釣り糸、カテライト 作家蔵
無題(豆の神話学) 2008 豆、アクリル樹脂、大理石 作家蔵
▲前出の【動画】で、廣瀬さんへのインタビューをお楽しみください!
ワールド・マップ 1991 地図 個人蔵
無題(セルフポートレート) 1991 カラープリント 個人蔵
無題 1992 紙箱、ゴムボール、プラスチック、大豆、アルミニウム、紙、色 個人蔵
無題 1992 テラコッタ、色、鉛筆、地図 Sugita Motohiro蔵
無題 1992 ダンボールにペイント 個人蔵
無題(タマ) 2015 (1992-2015) 紙 作家蔵
レモンプロジェックト03 1997 (2020) レモン、ガラス、ステンレス、ペイント、エッセンシャルオイル 作家蔵
ザ・ギンザ・アートスペースでの初めての展示から23年。今回は、展示されたレモンを石鹸や紙に再生する新たな取り組みが加わっているそう。現実の空間や社会の中で継続し、循環する、廣瀬作品の真骨頂といえそうです。
▲前出の【動画】で、廣瀬さんへのインタビューをお楽しみください!
ある夜の旅 2020 ピュアピグメントプリント、アルポリックにマウント 作家蔵
瞑想の庭 208 苔、土、電球、プレート、ワイヤー、電線 作家蔵
蜜蝋の家 2003 木、ワイヤー、鉄、蜜蝋、ガラス、梯子、蜂の巣 作家蔵
人間偏重主義に疑問を感じ、ものの家があってもいい、と想定してつくられたシリーズだそう。廣瀬さんの作品の強みは、鑑賞者が彼の考え方を理解する以前に、作品の愛らしさ、面白さ、美しさへの共感を獲得してしまうことではないでしょうか。なるほど、そういう考えなのね、とじわっと納得させられていくよう。
▲前出の【動画】で、廣瀬さんへのインタビューをお楽しみください!
ペペロンチーノの家(レッド、グリーン、イエロー) 2004 木材、ガラス、アルミニウム、塗料、赤唐辛子 作家蔵
▲前出の【動画】で、廣瀬さんへのインタビューをお楽しみください!
「私は家を建てた」シリーズ 1995-2004 幣 森司蔵
▲前出の【動画】で、廣瀬さんへのインタビューをお楽しみください!
「私は家を建てた」シリーズ 1995-1998 幣 個人蔵
ペペロンチーノの家 2004 アルミ製ポータブルバック、ガラス、唐辛子、木 作家蔵
ローズマリーの家 2004 アルミ製ポータブルバック、ガラス、ローズマリー、木 作家蔵
ターメリックの家 2004 アルミ製ポータブルバック、ガラス、ターメリック、木 作家蔵
▲前出の【動画】で、廣瀬さんへのインタビューをお楽しみください!
島:9年目の存在 2011-2020 ミクストメディア 作家蔵
▲前出の【動画】で、廣瀬さんへのインタビューをお楽しみください!
無題(ギャラクシーストーン) 1995 石、蜜蝋、洋金箔、本金箔 作家蔵
フォレストボール(写真上) 2020 造花、木、結束バンド、スチール、金具、ワイヤー 作家蔵
ビーンズコスモス(タマ)(写真下) 2017 アクリル樹脂、造花、豆、金、ダイヤモンド、プラスチック 作家蔵
ウェルトゥムヌス 2008 ベルファスト産黒石 花、水、木 作家蔵
花、水、石。ある種の緊張感をもって共存する、3者の関係をミニマルに表現しているよう。
マーレ・ロッソ(ノット-ホール)/A.P.0.プロジェクト 1998 ペルシャ・ギャッベ 作家蔵
ペルシャ(イラン)のカシュガイ族と交渉を重ね、羊毛を草木染めして手織りされたギャッベ。遊牧民が人と出会うと絨毯の上で語らう、という文化から着想を得た作品は、鑑賞者が加わることで完成するそう。
▲前出の【動画】で、廣瀬さんへのインタビューをお楽しみください!
ヴィアッジョ 2001-2016 ラムダプリント、アルポリック、アクリル、ポラロイド アーツ前橋蔵
廣瀬さんがイタリアに渡った1991年から続く、空だけを撮影した作品。旅先だからこそ出合える空。いつどこの空を見ても動かされる心。捉えきれない移ろいゆく表情への好奇心は尽きません。この作品は、下記の作品“空のプロジェクト「遠い空、近い空」”へと続いていきました。
空のプロジェクト「遠い空、近い空」 2012-2013 ミクストメディア アーツ前橋蔵
前橋市内にある母子生活支援施設「のぞみの家」の子どもたちと、空の写真を送り合う「空の交換日記」がおこなわれました。さらに、2035年までの19年間、タイムカプセルプロジェクトが継続中だそう。
アートは、こんなに身近で、こんなにポジティブなんだ!
アーツ前橋で、1日かけて、ゆっくりご体験ください!
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