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2020.06.18

六本木と前橋。空間を越えて仕掛けられた2つの作品展を訪ね、1つの見方・考え方に囚われない自由を体感しよう!

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Photo, Movie, Text: Sugita Motohiro + Tranlogue Associates Inc.


現代美術作家の廣瀬智央さんがイタリアへ渡って29年。小山登美夫ギャラリー(六本木)では “奇妙な循環”展が開催されています。
同時に、アーツ前橋では大規模な回顧展 “地球はレモンのように青い”展が開催されています。


メディアを通して次の暮らしをデザインするトランローグは、小山登美夫ギャラリーとアーツ前橋、2つの展覧会を訪ねました。
2つの作品展は、一見異なるイメージや思想に感じられますが、実はすべてがつながっているようです。

ここでは、小山登美夫ギャラリー(六本木)で開催中の “奇妙な循環”展についてリポートします。


“奇妙な循環”とは、始まりと終わりが繋がってしまうようなパラドックスの世界や、真とも偽とも言えない決定不可能な、具体的ではない、とらえどころのない世界観をイメージしているのだとか。
なお、 “地球はレモンのように青い”展のテーマは両義性。相反する二つの意味を持つ事柄や、対立する二つの解釈が成り立つ事柄なのだそう。

異質な作品同士がつながり、さらに、空間を越えて2つの展覧会がつながる。
日常的なものや事柄を、先入観なく新しい視点で再認識・再構築していく、廣瀬さんのアートワークの真骨頂と言えそうです。

六本木と前橋の会場を訪ね、知らず知らずのうちに染み付いた文化の呪縛から逃れ、境界を飛び越える自由な精神を体感しよう!


“奇妙な循環” 展
会期   2020年6月5日(金)〜7月4日(土)
開館時間 11: 00〜19: 00
休館日  日・月・祝日
会場   小山登美夫ギャラリー
     東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
    (東京メトロ日比谷線・六本木駅1b出口近く)
入場無料

“奇妙な循環”展 小山登美夫ギャラリー(六本木)の詳細はこちらから

“地球はレモンのように青い”展 アーツ前橋の詳細はこちらから
▲廣瀬さんへのインタビュー動画も、お楽しみいただけます!



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無題(五芒星) 2020 鹿の頭蓋骨、蜜蝋、本金箔、洋金箔、糸、豆 サイズ可変
 空間の中央に鹿の頭蓋骨を置き、糸と豆を使い、空間いっぱいに五芒星(ごぼうせい)と呼ばれる星形を描いたインスタレーション。五芒星は、古代の哲学者によって、神秘的で知的な創造のシンボルとして採用され、また、構成される各線分同士が黄金比になることで知られているそう。廣瀬さんは、岩石などの無機物では再現されない五角形の幾何学パタンが、生物学的なシステムでのみ、自然界で再現される点に注目しているようです。


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世界はあなたのもの 1992/ 2020 白黒プリント 20.0×30.0cm Unique
 廣瀬さんがイタリアに渡って2年目、1992年のカラープリントをトリミングして白黒プリントしたもの。当時の、未来や世界に対する彼の希望や思想が、みずみずしく蘇る作品です。


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無題 2020
 紙にトレーシングペーパーを重ねたドローイング・シリーズの1点。幾重にも重なる薄い層の色や線が、4次元的な視覚効果を生み出します。




無題 2015/ 2020 カーテン、観葉植物、扇風機 サイズ可変
 カーテン、観葉植物で構成されたインスタレーション。朝夕の光を想わせるピンク色のカーテン越しに見る南洋風植物のシルエット。風に揺れるカーテンの隙間から垣間見られるリアルで生々しい植物。視覚を遮る薄い幕と風がつくり出す、瞬間的に実像と虚像がスイッチする感覚が心地良い作品。見えそうで見えない。見えなさそうで見える、という両義的な状況をつくり出しているのだそう。


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無題(奇妙な循環) 2020 セメント、鉄、本金箔、洋金箔 h.101.0×w.5.0×d.5.0/ h.90.0×w.5.0×d.5.0cm
 セメント製の柱の切断面に金箔が施された作品。切断面は始まりであり、終わりでもあり、凸凹の断面同士はつながり、連続していくのだとか。果てしない循環を想う快楽って、確かにあります。


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無題(宇宙の原理) 2020 石膏、本金箔、洋金箔 h.8.0×w.23.5×d.23.5cm
 全体と部分が同じ形になるフラクタル形態のつぼみが特徴の、カリフラワーに似たイタリア野菜のロマネスコを型取り、合成漆に洋金箔、本金箔で仕上げた彫刻作品。例えば、中心で金色に輝く大きな構造と、中心も周囲も含めて、中・小さまざまな構造が同じ形を繰り返している様子が再現されています。自己相似の不思議さに、目も心も吸い込まれていきます。ロマネスコをアート作品にしたから面白いのか?、そもそもロマネスコがアートなのか・・・大切なのは、ものの見方と表現力のようです。


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無題(島) 2008 アクリル塗料 h.3.0×w.15.0×d.15cm
 円筒形の缶に、アクリル塗料を入れて型取り、乾燥させた作品。缶の底に接するアクリル塗料の面に現れた模様が、島のようにも見えるとか。ペインティングとは異なり、自動的に、より自然な方法で生成された景色を好むのは、日本人ばかりではないでしょう。


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無題(ブルーペインティング) 2020 キャンパスにアクリルカラー 30.0×24.0cm
 空のようにも、雲のようにも、空気のようにも見えるように。また、絵画の塗膜を支える面を構成する物を、支持体あるいは基底材と呼ぶそうですが、“無題(ブルーペインティング)”は、絵画でもあり、支持体そのものでもあるような曖昧な存在として想定されているようです。29年間、空の写真を撮り続けている廣瀬さんが今年、この作品を制作されたことは、とても興味深い。


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無題 2019 豆、木、18Kゴールド、K9クリスタル h.4.0×w.14.6×d.14.6cm
 貧しさの象徴とされることもあるそうですが、豆はとても美味しく心豊かにしてくれます。廣瀬さんが長年取り組んでいる素材であり、彼の分身とも言われているのだとか。アクリルの6面体に豆などを封入した“ビーンズコスモス”とは異なり、本作品は、より多くの面にカットされた高純度の9Kクリスタルを採用しており、見る角度によってさまざまに変化する表情は、正に彼のテーマとする両義性や多様性を際立たせているようです。


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無題 1992/ 2020 木枠に布 3点組:h.39.3×w.125.3×d.3.0cm 5点組:h.36.4×w.301.5×d.3.8cm
 木枠に2種類の布を重ねて張った作品。前出のカーテンのインスタレーション(動画をご覧ください)と同様に、見えそうで見えない繊細な状況をつくり出しているのだとか。今回、カーテンの作品と呼応させるため、1991年に制作された作品を新たな木枠に張り替え、29年間の隔たりと現在を内包させているのだそう。軽妙で深〜い、廣瀬さんならではの作品と言えそうです。



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2020.06.04

アーツ前橋で、廣瀬智央 “地球はレモンのように青い” 展を体験しよう!

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ブルーボックス 2005 ミクストメディア 作家蔵

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Photo, Movie, Text: Sugita Motohiro + Tranlogue Associates Inc.



1991年にイタリアへ渡って29年。さまざまな表現を駆使しながら、身の回りのものの新しい見方を提示してきた廣瀬智央(ひろせさとし)さんの、大規模な回顧展が開催されています。
テーマは両義性。相反する二つの意味を持つ事柄や、対立する二つの解釈が成り立つ事柄なのだそう。

メディアを通して次の暮らしをデザインするトランローグは、会場に廣瀬さんを訪ね、貧しさと豊かさ、天然と人工、アイデンティティと多様性などについて考えながら、見て・触れて・味わって、話を聞きました。

現実の空間や社会と一緒に展開し、完成されていく廣瀬さんの作品は、自分自身にも社会に対しても、とても肯定的で心地良く、“次の暮らしは、ものの見方、心のあり方ひとつで変えられる!”と前向きな気持ちにしてくれます。



会期   2020年6月1日(月)〜7月26日(日)48日間
開館時間 10: 00〜18: 00(入場17: 30まで)
休館日  水曜日
会場   アーツ前橋(JR前橋駅から徒歩10分)
主催   アーツ前橋
協賛   株式会社資生堂 株式会社原田・ガトーフェスタハラダ
助成   公益財団法人朝日新聞文化財団
     公益財団法人アサヒグループ芸術文化財団
協力   ウンベルト・ディ・マリーノ・ギャラリー AGC株式会社
     株式会社アート 株式会社虎変堂
     株式会社ユニオン 桐生大学短期大学部アート・デザイン科
     小山登美夫ギャラリー 高砂香料工業株式会社
     横浜ディスプレイミュージアム
後援   イタリア大使館 上毛新聞 群馬テレビ FM GUNMA
     まえばしCITYエフエム 前橋商工会議所

詳しくはこちらから

同時開催中の “奇妙な循環”展 小山登美夫ギャラリー(六本木)の詳細はこちらから



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廣瀬さんの作品を鑑賞・体験するキーワードの1つが、旅。

イタリアやペルシャ(イラン)、その他さまざまな国や地域を移動することで発見した文化の違いや共通点は彼に、創作の視点、思考のきっかけを与えているようです。
身に染み付いた文化の呪縛から逃れ、境界を飛び越える自由な精神は、多様で複雑な物事の関係性を再認識・再構築していく上で、とても重要なのだとか。
世界は多様で複雑、変化するから面白い。そんな思いに溢れている廣瀬さんの作品を、会場に足を運んで体験しましょう!

このリポートでは、数多くの展示作品のなかから、一部を紹介しています。
下記の【動画】では、感覚的な体験、貧しさと豊かさ、物事は関係性によって成り立つこと、個人のアイデンティティと社会的共生などについて、廣瀬さんに語っていただきました。


リポートをご覧いただき、実際に会場を訪ね、圧巻の回顧展をお楽しみください!




1997年に銀座・資生堂のギャラリーで発表され伝説となった“レモンプロジェクト”を、さらにスケールアップして再現された展示を見ながら、“臭覚や味覚といった感覚的な体験の、精神的な豊かさ”などについて語っていただきました。




“マーレ・ロッソ”や“無題(豆の神話学)”などを見ながら、“人が関わって作品が完成する。物事は関係性によって成り立つこと”、“貧しさと豊かさ”などについて語っていただきました。




“家シリーズ”などを見ながら、“個人のアイデンティティと社会的共生”などについて語っていただきました。



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アルレッキーノ 1998 布、釣り糸 パオロ・サボーナ・コレクション
 イタリアでは、3色の3角形の小布を見れば、道化のアルレッキーノを連想するそう。展示会の入り口に吊るされた作品は、これから始まる廣瀬ワールドへと誘います。


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地球はオレンジの実のように青い 2017(2008) モノクロプリント 作家蔵
 タイトルは、詩人ポール・エリュアール(1895-1952)の詩からの引用。ガガーリンが地球の青さを発見する以前から、詩人は地球の青さを空想していたのか・・・今回の展覧会のタイトルのきっかけとなったそう。


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無題 2020 紙、テープ、埃、木、ビニール 作家蔵
 展覧会の準備中に出たゴミも作品になっているとか。視点を変えると、無用と思われているものも、必要で美しいものに見える。廣瀬さんが旅や人生から得た、自由な精神の強さと楽しさが伝わってきます。


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無題 1997 テラコッタ粘土、釣り糸、カテライト 作家蔵


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無題(豆の神話学) 2008 豆、アクリル樹脂、大理石 作家蔵
▲前出の【動画】で、廣瀬さんへのインタビューをお楽しみください!


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ワールド・マップ 1991 地図 個人蔵
無題(セルフポートレート) 1991 カラープリント 個人蔵


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無題 1992 紙箱、ゴムボール、プラスチック、大豆、アルミニウム、紙、色 個人蔵


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無題 1992 テラコッタ、色、鉛筆、地図 Sugita Motohiro蔵


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無題 1992 ダンボールにペイント 個人蔵


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無題(タマ) 2015 (1992-2015) 紙 作家蔵


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レモンプロジェックト03 1997 (2020) レモン、ガラス、ステンレス、ペイント、エッセンシャルオイル 作家蔵
 ザ・ギンザ・アートスペースでの初めての展示から23年。今回は、展示されたレモンを石鹸や紙に再生する新たな取り組みが加わっているそう。現実の空間や社会の中で継続し、循環する、廣瀬作品の真骨頂といえそうです。
▲前出の【動画】で、廣瀬さんへのインタビューをお楽しみください!


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ある夜の旅 2020 ピュアピグメントプリント、アルポリックにマウント 作家蔵


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瞑想の庭 208 苔、土、電球、プレート、ワイヤー、電線 作家蔵


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蜜蝋の家 2003 木、ワイヤー、鉄、蜜蝋、ガラス、梯子、蜂の巣 作家蔵
 人間偏重主義に疑問を感じ、ものの家があってもいい、と想定してつくられたシリーズだそう。廣瀬さんの作品の強みは、鑑賞者が彼の考え方を理解する以前に、作品の愛らしさ、面白さ、美しさへの共感を獲得してしまうことではないでしょうか。なるほど、そういう考えなのね、とじわっと納得させられていくよう。
▲前出の【動画】で、廣瀬さんへのインタビューをお楽しみください!


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ペペロンチーノの家(レッド、グリーン、イエロー) 2004 木材、ガラス、アルミニウム、塗料、赤唐辛子 作家蔵
▲前出の【動画】で、廣瀬さんへのインタビューをお楽しみください!


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「私は家を建てた」シリーズ 1995-2004 幣 森司蔵
▲前出の【動画】で、廣瀬さんへのインタビューをお楽しみください!


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「私は家を建てた」シリーズ 1995-1998 幣 個人蔵


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ペペロンチーノの家 2004 アルミ製ポータブルバック、ガラス、唐辛子、木 作家蔵
ローズマリーの家 2004 アルミ製ポータブルバック、ガラス、ローズマリー、木 作家蔵
ターメリックの家 2004 アルミ製ポータブルバック、ガラス、ターメリック、木 作家蔵
▲前出の【動画】で、廣瀬さんへのインタビューをお楽しみください!


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島:9年目の存在 2011-2020 ミクストメディア 作家蔵
▲前出の【動画】で、廣瀬さんへのインタビューをお楽しみください!


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無題(ギャラクシーストーン) 1995 石、蜜蝋、洋金箔、本金箔 作家蔵


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フォレストボール(写真上) 2020 造花、木、結束バンド、スチール、金具、ワイヤー 作家蔵
ビーンズコスモス(タマ)(写真下) 2017 アクリル樹脂、造花、豆、金、ダイヤモンド、プラスチック 作家蔵


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ウェルトゥムヌス 2008 ベルファスト産黒石 花、水、木 作家蔵
 花、水、石。ある種の緊張感をもって共存する、3者の関係をミニマルに表現しているよう。


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マーレ・ロッソ(ノット-ホール)/A.P.0.プロジェクト 1998 ペルシャ・ギャッベ 作家蔵
 ペルシャ(イラン)のカシュガイ族と交渉を重ね、羊毛を草木染めして手織りされたギャッベ。遊牧民が人と出会うと絨毯の上で語らう、という文化から着想を得た作品は、鑑賞者が加わることで完成するそう。
▲前出の【動画】で、廣瀬さんへのインタビューをお楽しみください!


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ヴィアッジョ 2001-2016 ラムダプリント、アルポリック、アクリル、ポラロイド アーツ前橋蔵
 廣瀬さんがイタリアに渡った1991年から続く、空だけを撮影した作品。旅先だからこそ出合える空。いつどこの空を見ても動かされる心。捉えきれない移ろいゆく表情への好奇心は尽きません。この作品は、下記の作品“空のプロジェクト「遠い空、近い空」”へと続いていきました。


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空のプロジェクト「遠い空、近い空」 2012-2013 ミクストメディア アーツ前橋蔵
 前橋市内にある母子生活支援施設「のぞみの家」の子どもたちと、空の写真を送り合う「空の交換日記」がおこなわれました。さらに、2035年までの19年間、タイムカプセルプロジェクトが継続中だそう。



アートは、こんなに身近で、こんなにポジティブなんだ!
アーツ前橋で、1日かけて、ゆっくりご体験ください!



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