地方創生まちづくりフォーラム“まちてん2016” を訪ねました。
photo & text: Motohiro SUGITA + Tranlogue Associates
2016年12年9日(金)、10日(土)の2日間、渋谷のヒカリエホールにて、 地方創生まちづくりフォーラム“まちてん(主催:まちてん2016実行委員会)”が開催されました。“まちてん”はまちづくりの展覧会という意味。昨年初回開催時の「EXPO」から「フォーラム」へとタイトルの一部が変更されたことが、目指す方向の変化を表しているようです。
“まちてん”は、カンファレンス、セッション、展示、レセプションパーティーを通じて、地域、社会起業家、企業などが協業・連携するからこそ実現可能なサスティナブルなまちづくり事例・アイデアを発信し、熱意ある参加者が各コンテンツを通じて交わることを目的・特徴としているようです。第1回はソーシャルビジネス。今回は企業・大学にフォーカスしたそうです。
メディアを通して次の暮らしをデザインするトランローグは、
会場に出展社を訪ね、取材しました。
岐阜県瑞穂市
▲入り口近くで「自治体の取り組みが一堂に集結!」と銘打たれた“自治体グループ出展エリア”で最もPRに熱心だったのが岐阜県瑞穂市。千葉県に暮らす著者には、初めてお目にかかる自治体でしたが、他の控えめな自治体の中でひときわ大きな呼び声に興味惹かれて話を聞きました。
「皆さんの課題は?」という質問に返ってきた答えにびっくり。「現在、瑞穂市は名古屋のベッドタウンとして人口増加傾向に。いつまでも続くことではありませんので、今の内に次の手を打っておきたい」とのこと。備えなれば憂いなし、を地でいく手本のようです。同市の平均年齢は約40歳(2010年国勢調査)。人口増加率4.6%(2010、2015年国勢調査) は県内1位だそうです 。地元出身の俳優、平山浩行さんの協力を得て、まずは認知度向上からスタートのようです。
高知県
▲「高知県は、ひとつの大家族やき。」をキャッチフレーズに、移住促進のための“高知で暮らし隊”を募集する活動を展開。高知と言えば坂本龍馬と広末涼子、ということで、広末涼子さんがキャンペーンのイメージキャラクターを担当しています。高知県の魅力は、食と自然、心温かい人びと、ということで、大家族に魅かれる人に訴求しているようです。移住政策に当たっては、第2第3の故郷となることを訴求する自治体も数多ありますが、大家族を標榜する当たりが、大胆、大らかなイメージの高知ならでは、と感じました。“高知家”という表札も洒落が効いて素敵です。
OKB農場|大垣共立銀行
▲岐阜県大垣市の郊外に広がるOKB農場は、大垣共立銀行グループのOKB総研が2015年夏に開設し、株式会社土里夢ファームが運営しているとのこと。地元の特別支援学校や障害者施設の利用者が農作業に参加する“農福連携”を行っているそうです。同農場では、規格外のサトイモを利用した加工品をつくり、農業の6次産業化を実践。また同行は、地元の生産現場から出る牛糞、おが屑、籾殻を持ち寄って堆肥をつくり、地元企業が販売するといった展開も。地銀ならではのネットワークやノウハウを活かした取り組みは、農場という分野ではとてもイノベーティブに感じます。
株式会社あわえ
▲サイファー・テック株式会社は、徳島県美波町にサテライトオフィスを開設後、東京にある本社を同町に移転。株式会社あわえを設立し、誘致する側とされる側両方の体験から「美波町サテライトオフィス誘致プロジェクト」など、 サテライトオフィス誘致事業に取り組んでいるとのことです。美波町では14社を誘致(H28.4時点)。社会人口動態増加(2014年)を実現し、うち若者誘致は32名(移住希望者200名以上。H28.4時点)とか。これらの実績から、国や地方の行政関係者から民間企業、教育関係など200を超える団体の訪問、視察を受け入れてきたそうです。自治体向けの講演、“地域おこし協力隊”の定着率向上を目的として、地域起業からビジネススキル向上のための研修などを手がけているようです。
e-Pedicab Project
▲自動車運転免許証が不要な、3人乗りの電動アシスト自転車(SHIMANO製電動アシストコンポーネント搭載)。観光地での移動手段。駅などのターミナルからラストワンマイル用途。走る広告媒体。主に、これら3つの使い方を想定しているそうです。車体サイズは2.8×1.1× 1.7m。未だプロトタイプのようですが、環境を汚さない自転車で3人乗りは、間違いなく魅力的です。
カンファレンス|テーマ:Tourism
▲「定住人口減少」が確実な日本における、それを補う「交流人拡大」について、公益社団法人日本観光振興協会・副理事長・久保田さんよりプレゼンテーション。ちなみに定住人口1人分の年間消費額(124万円)は、外国人旅行者10人分、または国内旅行者(宿泊)26人分、さらに国内旅行者(日帰り)83人分に相当するそうです(総務省HPより)。
▲『ツーリズムを生むリノベーションホテル』について、株式会社リビタ(渋谷区)・ホテル事業部チーフディレクター・北島さんよりプレゼンテーション。「くらし、生活をリノベーションしたい」という思いが込められたリビタは、京王電鉄と東京電力が出資する次世代を見据えた不動産会社とか。同社が手がけた「北陸ツーリズムの発地」をコンセプトとする“THE SHARE HOTELS HATCHI”は、 北陸の玄関口、金沢に立地するリノベーションホテル。アートツーリズムへの発地など、北陸各地のひと・もの・ことにフォーカスし、ホテル丸ごとで表現しているようです。
▲『人気最下位の新潟になぜお客様はきたのか?』というテーマのもと、新潟県南魚沼市で自ら経営する宿“里山十帖”について、株式会社自遊人代表取締役の岩佐さんがプレゼンテーション。米や酒を中心に、とても印象のいい新潟ですが、京都のような観光市場が形成されていないため、放っておけば消えてなくなってしまう有形無形財産に溢れているようです。
▲アソビュー株式会社代表取締役社長の山野さんより、全国の遊びのマーケットプレイスとして、レジャー施設や地方自治体と連携し、多様なソリューションを提供している“asoview.com”についてプレゼンテーション。4,000以上の提携パートナーと15,000以上の体験プランは日本最大だとか。例えば自治体向けには、体験型観光の消費者調査から商品企画、商品造成までを提供するなど、ウェブ上のマーケットプレイスならではのソリューションを提供しているようです。
カンファレンス|テーマ:Finance
▲「お金に依存しない経済システム“里山資本主義”の先駆的な取り組みを行う岡山県真庭市から始まるコスモポリタンな田舎づくり」といったテーマのもと、カン・ユンスさんより、“インターナショナル・シェアハウス・照ラス”についてプレゼンテーション。空き家を利用した多国籍シェアハウスには、地域に触れたい世界各国のアーティストが入居。地域資源を体験した入居者の新たな提案を、地域コミュニティーと一緒に持続可能な事業へと展開しているとか。例えば、フランス人自転車専門家+異業種交流会による“外国人が案内する日本の田舎ツアー”といった新たな視点が、平凡な日常を新鮮味溢れる世界へと変貌させているようです。韓国のキムチ名人+生活交流グループによる“規格外品の梨を活用したキムチ”などは、国際的な友好とビジネスイノベーションを同時に誘発する、とても素敵な方法論と言えそうです。
▲『シリコンバレー流で、地域づくり』をテーマに、地域ビジネスプロデューサーの齋藤さんによるプレゼンテーション。齋藤さんは、シリコンバレーでITベンチャー企業を経てNPO法人まちづくりGIFTを創設。移住した宮崎県では『宮崎スタートアップバレー』を立ち上げたそうです。日南市で始めた『飫肥杉世界展開プロジェクト』では、補助金などは一切使わず民間、行政、NPOが連携し、クラウドファンディングを活用してニューヨークの見本市に出展して輸出拡大に結びついたとか。成功のポイントはチャレンジ精神いっぱいに、早く失敗すること。たくさん失敗することのようです。
▲『まちに光をあてる、クラウドファンディング』をテーマに、株式会社サーチフィールド・FAAVO事業部リーダーの八木さんによるプレゼンテーション。FAAVOは、地元・地域に特化したクラウドファンディングとのこと。地域単位でサイトを開設すると同時に窓口を設置して、地域密着型のサービスを提供しているそうです。例えば“FAAVO東京23区”では、「渋谷で運命の一冊と出会う!」をテーマに、読んで飲んで語り合う漫画サロンをつくるために資金を募集。“FAAVO美濃國”では、「蛍丸伝説をもう一度!」をテーマに、大太刀復元奉納プロジェクト始動のために集まめた資金が4,512万円。目標の820%とか。シリコンバレーに限らず日本でも、面白いアイデアには資金が集まるようです。FAAVOの特長のひとつが、相談窓口としての“エリアオーナー制度”。地域に密着したプロジェクトを主催するプレイヤーにとって、一番身近な相談窓口となり、FAAVOサイトを運営するそうです。
▲『自然エネルギーの活用を市民の力で』をテーマに、おひさま進歩エネルギー株式会社代表取締役の原さんによるプレゼンテーション。2004年に南信州で全国初の市民ファンドによる太陽光発電事業活動を開始して以来、持続可能な循環型社会を目指し、市民の意思あるお金を生かして、エネルギーの地産地消を目的に、地域事業者によるエネルギーの省・創・蓄に係る活動を行っているそうです。
2015年開催の第1回“まちてん”の様子は、こちらから
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