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2015.02.04

『活動のデザイン』展で見つけた次の暮らしのデザイン

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photo, movie & text: Motohiro SUGITA + Tranlogue Associates Inc.


デザイン関連のイベントで盛り上がる10、11月の東京デザイン月間。「日常的なできごとやものごとに改めて目を向け、デザインの視点からさまざまな発信、提案を行っていく場」として東京ミッドタウンに誕生した21_21 DESIGN SIGHTでは、2014年10月24日(金)から2015年2月1日(日)まで、『活動のデザイン展』が開催されました。
メディアを通して次の暮らしをデザインするトランローグは、“手にとることのできるものづくりに限定せず、社会が抱える課題を読み解き、問題を解決しようとする意志や活動そのものに目を向けた”同展を訪ね、次の暮らしのデザインを探しました。
『活動のデザイン展』では、製品のスタイリングや商品広告といった狭い意味でのデザインではなく、捨てられたペットボトルやアルミ缶から新たな価値を生み出し、さらにその価値を世界中に発信する等々、多義的で広範囲な“活動のデザイン”の数々が紹介されていました。
デザインを通して世界の今を浮き彫りにして見せた本展。第2弾を心待ちにしているファンが急増しているのではないでしょうか。

なお本リポートでは、それぞれの作品が「どういうデザイン活動なのか」について、本展キュレータの1人、横山いくこさんの解説を紹介させていただきました。これはあくまでも作品を分かりやすく解釈するための入り口に過ぎず、本来的には鑑賞者が自由に解釈すること、と考えています。


ペット・ランプ|Alvaro Catalán de Ocón|制作地(以下同様):コロンビア チリ 日本|2012年-
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“各国における伝統的な手仕事の価値を探る活動”
切り込みを入れたペットボトルを縦糸に、横糸には各国で手に入れられる素材を組み合わせ、地域毎の伝統的な籠や手織りの技術、模様でランプシェードをつくるプロジェクト。
素朴で大らかな印象の南米製ランプ(本ページ・トップの写真)と、精緻な京都製ランプ(上写真)の対比が面白い。京都では本プロジェクトのために人間国宝の職人さんが紹介されたとか。


A Million Times|Humans Since 1982|スウェーデン|2014年
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“複雑に関係しあう世界を描きだす活動”
プログラミングされた小さな384個の時計が、魅惑的なパタンを描き出しながら1つの大きな時計となって時を告げます。アナログとデジタルが渾然一体となって、見る人を惹きつけて止まない作品です。


21世紀初頭のスローガン|Douglas Coupland|カナダ|2011年-
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“時代のリアリティを言葉でとらえる活動”
時代の精神を言葉によって特徴づける本作品は、2011年から今でも継続して制作されているそうです。一連の言葉は、インターネットが台頭した時代の風潮を捉えているとのこと。どきっとさせられたり、目から鱗だったり。


ロースさんのセーター|DNA Charlois & Christien Meindertsma/ Wandschappen|オランダ|2012年
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“アノニマスな行為をたたえ、記録する活動”
ロースさんによって60年間編み続けられ、誰1人袖を通していなかった600枚のセーター。地元のDNAをデザインによってつなぐプロジェクトの呼びかけで集まった人々によるフラッシュモブや書籍として記録されています。ロースさん個人としての功績も讃えられるべきですが、ヒト、特にデザインマインドを持ったヒトは、モノをつくるために生まれてきた動物なんだと、いたく共感させられます。


Living Archive|Josefin Vargö|スウェーデン 日本|2011年-
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“日々の経験や知識をデザインで共有する活動”
パン生地を発酵させる際に使われてきた天然酵母を収集、保存。さらに、それらにまつわる知恵を共有し、交換する仕組みをつくる、つまり、活動をデザインしているのだそうです。「天然酵母の違いで変わるパンの味を食べ比べてみたい」と思う食いしん坊が世界の食文化を保全する。そう感じさせる見事な展示です。


ストーリー・ベース|Front & the Siyazama Project/ Editions in Craft|スウェーデン 南アフリカ|2011年-
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“手仕事で生活の軌跡を残す活動”
文字を使う教育を受けていない農村部の女性たち。従来は、文字で記録されることのなかった彼女たちの夢、ビジネス、HIVなどのストーリーが、針金とカラービーズを使った文字として編み込まれ、ガラスの花瓶として出現しました。このシンプルな力強さは、彼女たちのバイタリティの賜物なのでしょう。


プラスティック・ゴールド|Florie Salnot |西サハラ|2011年
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“個人の自信、文化の誇りをもたらし、独立した生活を支える活動”
独立を目指す武装政治組織と占領中のモロッコとの争いによって生み出された難民キャンプ。そこで入手可能なペットボトルと赤い砂を使って、光り輝くジュエリーを生み出しました。つくり方も、出来上がった作品も、感動的です。


マイン・カフォン|Massoud Hassani|オランダ アフガニスタン|2011年-
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“デザインの意義を人道的な解決策に応用する活動”
風で転がり続ける玩具の記憶を遡り、竹など廉価な材料を組み合わせてつくられた地雷撤去ボールです。工業化された製品にはない力強さ、信頼感や安心感、希望さえ感じさせるから不思議です。


プロフェッショナル・シェアリング:シェアの達人|牛込陽介|イギリス 日本|2014年
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“未来についての議論を起こすためのデザイン活動”
「シェアリング・エコノミー」が日常のあらゆる場面に浸透した世界において、シェアを生業とするプロシェアラーが、ウェアラブルスーツを着用しながら様々な情報をとって売る映像を通して、シェアの意義や問題について問いかけています。武装したような、軽く挑発的なイメージが、議論を煽ります。


ALMA MUSIC BOX: 死にゆく星の旋律|アルマ望遠鏡プロジェクト/ 国立天文台+PARTY+Qosmo+エピファニーワークス|チリ 日本 アメリカ|2014年

“見えないデータを五感に伝える活動”
銀河系の星『ちょうこうしつ座R星』から噴き出すガスの動きを伝える電波のビッグデータを可聴音に変換する試み。深く心に響く音源の見つけ方、つくり方ってあるんですね。


Shenu: 100年後の水筒|タクラム・デザイン・エンジニアリング|日本|2012 / 2014年
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“人間の根源的な価値観を探る活動”
放射能汚染や海面上昇によって自然資源が失われる100年後の未来において、体内に必要最小限の水を蓄える人工臓器を含むプロダクト提案。本展における“活動のデザイン”は、“既存社会へ向けた提案のデザイン”と書き替えることができそうですが、それを最も刺激的に体現しているのが『100年後の水筒』ではないでしょうか。


カン・シティ|スタジオ スワイン|ブラジル|2012年
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“廃棄物とストリートカルチャーをクラフトでつなぐ活動”
資源ゴミを収集・換金して生計を立てる「カタドール」のために考案された、移動可能な「鋳造場」。アルミ缶、廃油、植物から即席に椅子などをつくり出し、販売することができるそうです。路上に落ちたヤシの葉や枯れ枝など、価値としてはマイナスの評価を受けることの多い材料を、美的に希少価値の高い商品へと変えてしまうアイデアと行動力が、とても頼もしく感じる活動のデザインです。


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