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2014.10.21

植物工場〜ICTを活用したモデルハウス型栽培施設〜を見学しました。

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photo & text: Kazuko TOMOYORI + Tranlogue Associates

2014年10月16日、社団法人 日本冷凍空調工業会が主催する「植物工場千葉大学拠点施設見学会」に参加しました。
つくばエクスプレス「柏の葉キャンパス」駅近くにあり、農林水産省の「モデルハウス型植物工場実証・展示・研修事業」として、2009年に計画され2011年から本格稼働しています。モデルハウス型とは、住宅展示場のように、施設ごとにコンセプトを持って実証している展示のこと。栽培方法から、設備、建物、コントロールシステム、研修の受け入れ、商品の販売など、丸ごとパックになってプレゼンテーションされ、まるでハウスメーカーの規格商品住宅のようです。あるモデル施設は、中国向けに販売が始まっているとのこと。モデル施設の多くが、海外展開を見据えた技術の確立を目指しています。
なお、モデル施設には、太陽光を利用する「太陽光植物工場」と、太陽光を利用せず人口光のみを利用する「人工光(閉鎖型)植物工場」の2つがあります。

海外需要の高い「無農薬栽培」「節水栽培」「周年栽培」。
植物工場に高い注目が集まる理由の一つに、無農薬野菜への需要の高まりがあります。中国やアジアの一部の国では、野菜についた農薬を洗い落とすための洗剤まで売られている昨今、無農薬で洗わずに食べられる葉もの野菜に関心が集まっています。また、断熱性の高い施設には、暑すぎて葉もの栽培が不可能な中東や、冬に新鮮な野菜が欲しいロシアなどの寒冷地、また栽培に必要な水分も大幅に節約できるとあって、水不足が深刻な地域からも注目を集めています。

ヒートポンプとICT制御
さて、こちらの施設は、これまでのビニールハウス栽培と何が違うのでしょうか?
これまでの日本の施設園芸では、例えば溶液栽培の場合、面積当たりの収量が、オランダトマトの3分の1ほどしかなかったとか。この差を日本の技術で埋めていこうというのが基本。共通する主な技術は、ヒートポンプ機器(エアコンに代表される、冷媒を用いて空気の温度を上げ下げする機器)の活用とICTによる環境制御。どちらも日本が得意とするものです。環境制御で収量をアップさせ、ヒートポンプ活用でランニングコストを低減させるというもの。さらに、雨水利用が基本です。地下水を利用しないことで、土地ごとに異なる養分による生育の違いを避け、ユニバーサルに展開するためとか。同時に、地下水の保全は、環境保全につながります。なお、人工光利用の閉鎖型工場では、雨水を通して微生物が侵入するのを避けるため水道水を使います。ただし、工場内部で出る植物などからの蒸散水を浄化し、再利用するなど、通常の50分の1の水量にまで抑えられる超節水型だそうです。

施設内では900ものセンサで計測
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見学前には、千葉大元学長でNPO法人植物工場研究会理事長の古在先生直々の講義がありました。施設内には約900のセンサーがあり、各種データを1分毎に計測しているとか。換気、送風、冷暖房、CO2施用、溶液、除湿、細霧発生、遮光などを機器で制御しています。これらのパラメータ(生育に係わる要因)と、気象や市場の価格などを見ながら計画生産を試行しているそうです。

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プロジェクトには、当初60社が参加し、その後も35社が加わり、本プロジェクトへの関心の高さが伺えます。

多段型人口光利用のレタス工場
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サイン看板にある10段栽培型の人口光利用のレタス栽培の植物工場は、ちょうど入れ替え時期のため今回は見学することはできませんでした。サイン看板には、本プロジェクトに参加する大手電機メーカーの名前が並んでいます。今日は、先生の後ろに写っている発泡スチレンでできた個性的なドーム型のレタス工場を見学します。

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阿蘇ファームランドが運営する、この人工光利用型(完全閉鎖型)の植物工場は、エアーシャワーのあるクリーンルームで、洗わなくも食べられる無農薬レタスが栽培されています。ヒートプンプを利用して風を送り込み湿度を制御することで、葉の気孔の開閉を誘発し、効率的にCO2を吸収できるように管理しています。風を強く当てれば葉にはパリパリ感が出て、風をゆるくすると柔らかく食べやすいものに、といった食感もコントロールできるそうです。

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厚さ200mmの発泡ポリスチレンでできた断熱性の高いアーチ型ドームの植物工場。

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常時3人程度で作業。種まき、収穫、袋詰めなどを行います。

完全閉鎖型で苗づくりを行うトマト工場
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次に見学したのは、トマト工場。

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「柏の葉キャンパス」ブランドのトマト。

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栽培で大切なトマトの苗づくりを完全閉鎖型の室内で行います。この後、別棟の太陽光利用施設に植え替えます。苗を無農薬で育てられるので、全体として農薬使用回数を大きく減らせるそうです。ただし、ICTで栽培管理していても、担当者によって不良品率は、大きく変わるとのこと。この差を縮めていくのが、データ分析の課題だそうです。

カンと経験を、ICT化
天候や台風などの災害に大きく左右される従来の農業には、安定的に収入を得ることが厳しい、といった一面があります。カンと経験に頼っていた技術を、日本の得意なICT技術でデータ化し、解析・活用したり、また、異業種間コラボにより新たな視点を発明に変えることで、日本の「農」が一大産業として発展する予感がしました。

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