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2014.08.09

『スマートコミュニティ Japan 2014』で見つけた、2つの日本の未来

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photo & text: Motohiro SUGITA + Tranlogue Associates

2014年6年18日(水)〜20日(金)、東京ビッグサイトにおいて『スマートコミュニティ Japan 2014(主催:日刊工業新聞)』が開催されました。
スマートコミュニティは、エネルギーや交通などのインフラから、オフィスや住宅、医療、教育など暮らしに係わる隅々まで情報化(デジタル化)して無線や通信でつなぎ、ユーザー1人1人が無駄なく無理なく、快適に過ごすためのICT(情報通信技術)環境のこと。
近年スマートコミュニティを自らの専門分野と位置づけ、取材、研究を進めるトランローグにとって、今回最も大きな発見は、私たちの将来に大きく係わるエネルギーと食料の分野における、将来像の提示でした。
エネルギーでは、東芝による水素社会への転換。食料については、農林水産省による、おいしさを追求する施設園芸への転換です。
これらの実現には、様々な難題を解決し、多大な労力と莫大な投資が必要です。しかし、それらを乗り越え「この目で見てみたい」「共に実現したい」と思わせる魅力や説得力を感じさせる未来図でした。


■東芝による水素社会の提案
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エネルギー自給率4%(原子力を除く)の日本においては、東日本大震災以降、石油や天然ガスなどの化石燃料の輸入増加によって貿易赤字が膨らむと同時に、CO2排出増加によるさらなる地球温暖化が懸念されています。
他方、自給可能で環境にやさしい再生可能エネルギーですが、余剰電力の貯蔵が難しく、広域で電力需給を調整する「系統」としての不安定さが未解決と言われています。
これらの問題点を解決する切り札が「水素エネルギー」とか。
水素エネルギーの原料である水素は、無尽蔵とも言える水を電気分解することでつくり出すことができます。また現在では、石油化学や鉄鋼などの製造施設に、利用可能な水素が余っている、と言われています。
水素は液化させるなどして貯蔵し、運搬が可能なため、使いたい場所で使いたい時に「水素発電」などを通して電気エネルギーをつくり出すことができるのです。
水素発電の1つでよく耳にするのが「燃料電池」。水素と酸素を結合させ、電気エネルギーと熱エネルギーを効率的につくり出す装置で、再生可能エネルギーによって水素をつくり出せば、発電段階でCO2を排出しないため、CO2フリーの電源となるそうです。
取材時、東芝では、東京オリンピックが開催される2020年をマイルストーン(中間目標)とし、2030年頃に水素社会を実現したい、とのことでした。特にニュースリリースやパンフレット、プロジェクトのロードマップ(工程表)は準備されていませんでしたが、企業としての本気度は、展示の通り、とか。ブース前面に分かりやすく、きれいな模型とともにに紹介されていました。
原子力発電をはじめ、国内外におけるエネルギーのリーディングカンパニーが、水素社会を提案することは大変興味深く、意義あることと思います。
ところで、本取材の翌週、経済産業省より「水素・燃料電池戦略ロードマップ」が発表されました。
本件についてより詳しく知りたい方はこちらからダウンロードしてみてください。

■農林水産省による次世代施設園芸の提案
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ガラス温室やビニルハウスで栽培環境をコントロールしながら、大規模かつ計画的に野菜や果物を生産するのが施設園芸。
国内農業の衰退、原発事故による環境汚染、高まる海外農産物の輸入圧力など、農業を取り巻く劇的変化のなかで、国内農業生き残りの切り札として注目を集めるのが次世代施設園芸です。
500項目にも及ぶ栽培パラメータ(生長を促す要因)を管理しながら、EU中心に世界中に野菜を輸出するオランダの施設園芸については、ご存知のかたも多いのではないでしょうか?
国内でも近年、栽培環境の温度や湿度、水や二酸化炭素濃度などのパラメータをセンシングし、管理者のデバイスにデータを無線で送信し、管理者はデータに基づき適切な栽培環境にコントロールする、といった一連のシステムが紹介されています。しかし、これだけでは、オランダその他、海外の大規模な施設に太刀打ちできるはずがない、と悲観しているかたも多いはず。
このような状況下、農林水産省では、海外視察を通して日本独自の施設園芸のあり方についてまとめていました。そして、上図のようにオランダの施設園芸をベースに、日本にふさわしい施設園芸のあり方を示しています。
日本では、材料や設備、人件費から土地代まで高額で、オランダのようなスケールメリットを出せないから「品質」を重視する、といった他の産業界でも見られる方針に帰結したのかと思いきや、事情は正反対とか。
「量」を追求するオランダとは異なり、日本の農業は伝統的に「品質」を追求してきたのです。日本人にとっては当たり前のことでも、米や野菜、肉もしかり、日本人の食味へのこだわりは、並々ならぬものがありますね。
今ではこれが近隣諸国に知れわたり、日本の農産物は美味しくて安全、と評価され、求められているようです。もちろん、量やコストを追求しなくていい理由はありません。
おいしく安全な食料を地産地消し、さらに海外へ輸出するためには、安定した生産が欠かせません。また、台風などの水害や干ばつに悩ませられ続けてきた日本の農業。栽培環境のコントロールは、日本の農業の悲願とも言えます。
次世代施設園芸は、今では大手電気メーカーも続々と新規参入するなど、地産地消と輸出の切り札に、そして次の暮らしのベースになりそうです。

■NEDO、日立製作所他によるスマートコミュニティ実証実験
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写真上は、NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)とハワイ州の合意形成により、風力・太陽光エネルギーの導入が進んでいるマウイ島での出力不安定性、周波数低下、系統機器への過負荷を解決するため、EV(電気自動車)の充電タイミングを調整するマネジメントシステムの構築を通して、クリーンエネルギーモデルの実現を目指す実証事業を表す日立製作所の展示。
写真下は、EVの大量普及を目指すスペインにおけるマラガ市とNEDOの合意形成により、ICTを駆使してEVユーザーの行動変革を促すことで、EVの大量充電による電力系統への負荷を低減する技術の実証事業の概要。実証実験では、多少コスト高でも環境にやさしいEVを支持するユーザーですが、いざ実際に充電費用を自己負担するとなると財布の紐が固くなるのが現実とか。高い志のまま、いかにユーザーに課金していけるか。多くの実証実験の後半では、同様の課題が浮き彫りとなり、そのノウハウこそ参加企業における事業の核心と言えそうです。

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