『若冲が来てくれました』を見てきました。
Photo & Text: Motohiro SUGITA
東日本大震災復興支援 特別展示として2013年3月より仙台・盛岡を巡回してきた『プライスコレクション 江戸絵画の美と生命 若冲がきてくれました!』。同展の最終日、9月23日(日)開館前の朝8時半過ぎに福島県立美術館を訪ね、チケットを購入する列に並びました。
展示は、円山応挙や長沢蘆雪、鈴木其一をはじめ江戸時代の傑作を集めたプライスコレクション(カリフォルニア)を中心に、国内の美術館など多方面から出品。もちろん一番の見所は、何と言っても伊藤若冲(じゃくちゅう。1716-1800)です。
若冲は、京都の青物問屋の4代目でありながら商売に関心がなく、酒も飲まず芸事もせず、生涯結婚せずに絵の道に没頭していたというのが定説です。常軌を逸した緻密な筆致。正確かつ大胆で緊張感溢れる画面構成が、若冲の人物像を補強しているのは間違いありません。しかし、晩年は町年寄として、業務停止を命じられた市場(現・錦市場)の再興のために奔走した、という一面もあったとか。
30年前、京都でデザインを学び、日本美術史の授業で毎週のように寺を巡っては絵画や建築、庭園を見て学んだ私たちにとって若冲は、当時から他の画家とは別格。まさにスーパースターです。
ジョーと悦子のプライス夫妻は、「震災直後の避難所で、配られたおにぎり1つに『ありがとうございます』と頭を下げる被災者の方々に、自らのコレクションを見せてあげたい」と願い、この企画が実現したそうです。なお、本展の収益は、すべて東北にもたらされる、とのこと。
若冲の作品は、楽しく、美しく、気高く、生命エネルギーの塊のようです。会場で若冲の絵を前にして、興奮気味に会話する老若男女の姿が印象的でした。
反面、来場者の皆さんは行儀がよく、絵から結構な距離をとって見ていた点が少々残念でした。それは「おにぎり1つ」に感謝の気持ちを体現する私たち日本人の精神性にも通じますが、絵画から生命のエネルギーを得るには、ガラス面まで近づいて、その筆致、ディテールを凝視して楽しむことをおすすめします。顕微鏡のように、離れていては見ることのできない別世界を旅することがきます。若冲の場合、ディテールの中にも細密な部分と大胆な構成が見られ、描き込んで様式化していった道のりに思いを馳せることができます。とにかく細部まで神経がいきわたって、もの凄いんです!
プライスコレクションでは、今回が若冲最後の帰国となるそうです。
「いざ若冲!」・・・うれしくも切ない気持ちで福島をあとにしました。
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