【リポート】DESIGNTIDE TOKYO 2012 で見つけた次の暮らしのデザイン〈第2弾〉
織咲誠さん(インターワークス研究所)による会場構成。段ボールやエアクッションを用いて生きた樹木から直接型取ってつくられた数十本の「樹」。多摩美術大学と桑沢デザイン研究所の学生有志が「自らつくる」ことをテーマにデザインの原点を体験したプロジェクトでした。出展者と作品が木の下に集い、語らうことを目的とした空間の完成です。
photo, movie, text: Motohiro SUGITA
会期:2011年10月31日(水)-11月4日(日)
会場:東京ミッドタウン・ホール
「デザインタイドトーキョーとは、・・・形を生み出す源泉である思考そのものを発表し、対流させて、あたらしい思考と形が生まれること。デザインタイドトーキョーは、そんな思考をトレードする場です」(公式ガイドブック巻頭より)。東京で秋のデザインイベントが始まった10月末、メディアを通して次の暮らしをデザインするトランローグは、デザインタイドトーキョーのオープニング前日に開催されたプレスプレビューを訪ね、取材しました。第2弾では第1弾で紹介した動画に加え、写真とテキストでより詳しくリポートします。
ファッションブランド「タイニーダイナソー」を運営するリタルダントの提案は「冬の衣服における夏の役割」。ダウンベストの中に微細なヒノキのチップを入れ、防虫・抗菌、リラクゼーションなどの機能を持たせ、クローゼットの中で夏も働いてもらいます。滑らかなシルエットにリボン使いでユニセックスという、さらに働き者の設定も好感です。
■see-saw 2nd collection
2011年に東大阪の木工工房「LAUGH」がPANTALOONをクリエイティブディレクターに迎えて立ち上げたオリジナル家具レーベル。今年はセカンドコレクション。写真手前は着脱可能なクッションがポイントのso far。奥には節の部分にひとまわり大きな穴を開けた木の箱、replace。マグネットの付いた2つの木片の組み合わせで長さを調節する照明、and。
■DMY Berlin
DMY Berlinは、プロダクトデザインの国際的ネットワーク。デザインのメインストリームには見られない革新的なプロジェクトやプロダクトを発表。上写真はCarl DauによりデザインされたArt in Series。小物を入れる棚であり、思考を活性化するインスタレーションでもありそう。下はroomsafariによるcane。壁に光を当てる間接照明という行為をかたちにした優れもの。
■DESIGN SOIL
神戸市芸術工科大学のデザインプロジェクトがDESIGN SOIL。「・・・多くのものを使い捨てる生活が日常となっている今だからこそ、私たちはそうでない価値を見据えたいと思います・・・」(ブックレットより)。写真上は糸巻きと椅子の組み合わせが革新的と言える、真鍋浩美さんデザインによるrollin' rollin'。下は松本雄樹さんのデザインで、カップルが各々別々に使っていたデスクを結婚を機に1つのテーブルとして合体させるlovebird。奇抜なアイデアを、ディテールまでしっかりとかたちに定着。アイデアも製作の技術も見事です。
■MONOLITH | ナトコ株式会社+鈴木啓太
塗料化学メーカーのナトコ株式会社と、PRODUCT DESIGN CENTERの鈴木啓太さんのコラボレーションによって製作されたオブジェがMONOLITH。映画『2001年宇宙の旅』から引用され、デザインに進化を促す行為、を意図するようです。1つの面に3種類の塗装を施してあり、それぞれに「自己修復機能」「超防汚機能」「後加工性」「対粘着材機能」「耐指紋性」といった機能があるとか。
■Food Work
8人のノルウェー人デザイナーによるプロジェクト。調理、貯蔵、盛りつけ、食事がテーマ。日本文化から着想を得てノルウェーの日常生活のためにデザインされた作品が、日本でどのように受け入れられるかを知り、新たなインスピレーションを得ることを目的に展示しているそうです。包丁が収納できるまな板、茶会で茶を点てるためにあるかのようなセット・・・。日本人である私たちのライフスタイルに一石を投じてくれました。
■emmanuelle moureaux
■ORISHIKI, ori-con β | N&R FOLDINGS
折り紙、風呂敷、方式から造語された「ORISHIKI」。複数の三角形のパーツを組み合わせたユニークなパッケージ。さらに、包んで運びたいオブジェクトを三次元スキャンしたデータを基に、専用のORISHIKIを設計するシステム「0ri-conβ」をデモンストレーション。次の暮らしのデザインの、萌芽を感じさせてくれます。
■tilde _object 01 | inframince.inc
基礎化粧から出発して身体と環境の接点に目を向けられるようなプロダクトを開発、提案するアンフラマンス。写真上はPANTALOONデザインによる時間の集積を纏う時計、12H12Y。半日に1回転を繰り返す単調な時計と異なり、銅製の文字盤は移ろい続ける時間を表現するため12年で1回転する。下はOueデザインによる重さを視覚化した木の箱、gram。色や木目はもちろん、樹種による重さの違いに着目し、50gと100g、2種類の木箱シリーズをデザイン。シラカシ、チーク、メープル、ワールナット、スギ、5種類の箱がネイチャーやサイエンスに思いを馳せる快感を教えてくれます。
■rabbit hole
■portrait in chair | 早川明男
座と背を、脚と15度の角度でずらした椅子。本来、座と背と脚の角度が0度で一致している状態とは、どのような姿形なのか・・・と考えさせてくれた作品。このように面倒な思索を強いる椅子ですが、背面からの(どこが背面かって?(笑))美しい姿に、この椅子の真価が見えました。日常空間で体験できる対象となる日が楽しみです。
■SAKAN LAB. | bril
昨年、実験的な作品づくりで私たちを楽しませてくれたbrillが、今年も新たな試みで見せてくれました。今年のテーマは「左官」。土と藁と糊を混ぜて壁をつくる昔ながらの建築技術を器や照明に展開。焼き物にはない、より自然で生な感覚が私たちの感性を覚醒してくれます。
【取材後記】今回は、作品に撮影者の影が落ちてしまったり、取材対象者の作品の背景に他者の作品が被ってしまったりと、取材・撮影者泣かせの展示でした。しかし、「出展者と作品が木の下に集い、語らう」ことを目的としている、とのことなので、このような不便も会話を触発する装置と考え、出展者の皆さまとのコミュニケーションを楽しませていただきました。便利さがコミュニケーションを阻害してきたことも事実ですね。
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