"ASIAN POWER OF LIGHT" で見た、日・中・韓・タイの照明と今、昔。
text: Motohiro SUGITA
2012年11月10日(土)10: 30〜19:30、東京デザインセンター・ガレリアホールにて開催された、円卓会議・照明楽会によるトークイベント「照明力特別企画 ASIAN POWER OF LIGHT」を訪ねました。
内原智史さん、東海林弘靖さん他、円卓会議・照明楽会の3名をホストに、中国からQi HonghaiさんとZhang Xinさん、韓国からChung KangwhaさんとLee jaehaさん、タイからChanyaporn Chuntamaraさん。そして、日本から近田玲子さん他2名をスペシャルゲストに迎え、それぞれ独自の照明観を語り合いました。
東日本大震災で省エネがベースとなり、原風景への回帰ムード漂う日本。ナトリウムランプが特徴的だったソウルの夜景に対して、4000K(白色相当)を基準に一新し、歴史的建造物は3000K前後(電球色相当)で演出するなど、デザイン先進国の韓国。来年には光害防止ガイドラインも施行されるそうです。経済発展著しいタイでも、樹下に家屋を配し、小さな窓で断熱して中庭から光を取り入れる伝統様式は、今でも彼らのキーイメージのようです。
特に印象的だったのは中国。常に日本や欧米から「エコ」や「省エネ」に対するプレッシャーをかけられる彼らが反論のベースとしたのが、アメリカや日本に比べれば、中国人1人当たりの消費電力は僅かである、というポイント。また、海外から見た日本のイメージは、今でも「24時間都市(24時間明々と照明の灯る国)」なのだそうです。さらに、51%が都市、49%が農村の中国では、照明を文化として語る段階ではなく、未だ明るさを確保しなければならない場面も多いとのこと。中国=経済発展というステレオタイプへの警鐘でしょうか。なかでも印象深かったのは、照明以前に大事なものがある、という胸に刺さる発言。そして会社の同僚の数々の大事なものを写した写真を披露してくれました。そして私たちオーディエンスの心を捉えたプレゼンテーションへと続きました。セッション3「アジアのうたと光」におけるQiさんと同僚で手づくりしたミュージックビデオです。70年代に少年時代を過ごした彼は、共産主義が電気(電灯)や水道などのインフラを普及させ、彼らの生活を豊かにしてくれる、と夢見たこと。そして、それが失望に変わった様子を切なく描いていました。
「大規模な都市計画模型をたった数日間で作ってしまった」「プレゼン2週間後には実店舗を新装開店してしまった」・・・。中国人デザイナーのクリエイティブに対する情熱と集中力に纏わるエピソードには事欠きません。対して私たち日本人デザイナーには今、「この程度でいいだろう」といった惰性が蔓延していないでしょうか? ミュージックビデオを通して、情報発信への情熱とクリエイティブを楽しむ姿勢を改めて教えられた気がしました。
日中の今日の政治情勢のなかで実現したこのセッションに対する感謝。日本のアニメやカラオケへの親近感を語るなど、日中の距離感を縮めようとする彼らの姿勢が、未来を明るく照らしているようでした。また、中国、アジアのことをもっと知りたいと思わせるセッションとなりました。
ところで、2012年7月30日にアジア照明デザイナー協会(Asian Lighting Designer's Association)が香港で設立されました。ライティングデザインの社会的貢献の浸透と成長を担ってるそうです。
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