DESIGNTIDE TOKYO 2011, TIDE EXHIBITION|デザインタイドトーキョー2011 タイドエキジビション
関連記事:02■次の暮らしのデザイン
photo/text: Motohiro SUGITA
会期:2011年10月29日(土)-11月3日(木)
会場:東京ミッドタウン・ホール
六本木駅から地下通路でつながれ、デザイン関係者から「とても見やすい」と評判の本展も7年目を迎え、ますます展示空間も洗練されてきたようです。東京でデザインウィークが始まった11月末、トランローグは本展のオープニング直前、28日(金)午後のプレス向け内覧会を訪ね、取材してきました。
壁は透過性のある白。床はライトグレーでまとめられ、とても見やすく撮影しやすい環境で、作品や商品の形や意味を際立たせることができ、フォトグラファーにも出展者にも効果的でした。聞けば、プロダクトデザイナーである中坊壮介氏による会場デザインとのこと。建築家とは違って、日頃からモノの良さを引き出すことに腐心している同氏ならではの智恵の結晶だったのでしょう。なお、この白く透明な空間は日本、とりわけ東京のクリエイティブの象徴でもあります。
商品化以前のプロトタイプを熱心にプレゼンテーションする若手デザイナー。彼らの作品は、シンプルだけど独特なデザインで私たちに訴えてきました。
■IDIOM|AIR FRAME
アクリル加工を専門とするair-frame。45度の角度で付け合わせ、僅かな隙間もつくらない加工精度で組み立てられた純白の展示台。ヒンジを使わずにピタッと開閉する上蓋には脱帽。加工道具から商品の時計まで、彼らのアクリルへのこだわりがひと箱ごとに丁寧にプレゼンテーションされていました。
木工家具工房 Laughによる家具レーベル。写真・上は、木板の節の部分をカラーメラミンで象嵌したキュートでエクセレントなアイデア。ここをコースターに使うなど、楽しいライフシーンが次々と目に浮かびます。
■one for all|猪熊純+成瀬友梨×MOCCA
住友林業による木化(MOCCA)プロジェクト。数十枚の薄い板を積層して曲げた1枚の皿であり盆でもある優れもの。カップルで。家族で。友人とのパーティーで。これを使いたいと思わない人がいるでしょうか。
また前掲出展者同様に、模倣される前に1日も早い商品化を望むのは私だけでしょうか。
■Flip series|フリップシリーズ Daisuke Motogi Architecture × sixinch JAPAN
3つの椅子をひっくり返して違った機能の椅子へと変身させる楽しいコレクション。世界的なインテリアの流行色を取り入れている点など、隙がありません。
■GUBBE/MARROW|グッベ/マロー 机宏典
当初、2003年にスウェーデンの村おこしのためにデザインされたもの。量産化に向け、デザイナーの地元、信州産カラマツを使い、柔らかく安心感のあるデザインに仕上げました。
■Hands & Hand|手と手と手 プルーフ オブ ギルド
連結されてつくられた焼き物をご覧ください。その大きさ、形、色合い、すべてが上品に優しく語りかけていると思いませんか? 写真はルームディフューザー、ランプ、ペン立てだそうです。カタログもとても素敵でした。
■KTDK|小関隆一
棚と表裏一体となったパネル、あるいはパーティション。本や資料、通信機器やプリンタなどコンパクトに納めてもいい感じです。
写真・上は、スタジオで商品などを撮影する際に使うスクリーンという意味の“Horizont”。プロのフォトグラファーなら一目瞭然。物の意味、存在感を際立てる素晴らしい着眼点です。写真・中は継ぎ目のない、きれいな形で安定感の増したハンガー“Sen”。大切な服にはブラックもいい感じです。写真・下は、座る、物を置く、を両立された椅子/棚。ここで使われた三次元加工は、使う、愛でるの次の機能を誘発しています。
■Furniture of prayer|祈りの家具 西村森衛
天才的な造形センスとテクニックでつくられた、祈りをテーマとしたインテリアプロダクトシリーズ。繊細で美しい化粧台。暖炉の形をした仏壇。セメントをフェルトで覆った軽快で?重量感溢れる?不思議なトレイ。地中に埋まった瓶をイメージした神秘的なトレイなど、彼らの世界観、ストーリーは、まるで“次の暮らしのデザイン”を占っているようです。
■snow plate|YANOBI
雪が降り積もった後、太陽に照らされ、風に吹かれて凸凹になった雪の表面を見たことがありますか? YANOBIのsnow plateは、その白く輝く眩さを食器に定着しました。2千円から5千円の価格帯。早速yanobi.comから取り寄せたいと思います。
■BLOCTOOL|藤原敏嗣
玩具もデザインする彼らは、「おとなの自由工作」をコンセプトに家具でもあり玩具でもある、とてもユニークな家具をつくりました。写真のパーツに棒状のパーツを加えることで、椅子や棚、デスクや階段まで、様々な家具オブジェを楽しめます。
■toge|emmanuelle moureaux
建築家エマニュエル・ムホーによるインスタレーション。写真の通りに、いや、写真以上に美しい、棘のあるウェディングドレスを彷彿とさせるインスタレーションは、光と影、色と触覚を刺激する幻想的なアートです。1つ1つの棘の完成度も抜群です。
■LACOSTE Holiday Collector’s Series
会場中央に陣取った、ワニのエンブレムでお馴染みラコステパビリオン。写真は世界の著名クリエイターによるアイデアポロシャツの中でも群を抜いてグロでキュートな全身ラコステポロ。ここまで徹底されると、一着欲しくなる涼しげな?逸品。
■Tolerance|トレランス 北川大輔
“rename”と名付けらたシリーズ。既成の、手持ちのカップやグラスに、新たな木製パーツを被せることで別の物へと蘇らせるコンセプト。通常マグカップ類の口径は80mm前後の規格であることから、口径の同じ木製パーツに輪ゴム状のシリコンをはめてマグカップ類に押し込むことで、様々なカップと組み合わせて密封。日頃、携帯電話をデザインしている北川さんは、少しでもロングライフな物をデザインしたいと語っていました。
■CERAMIC LAB brill|セラミックラボ ブリル
「ワンモールド(写真・上左)」は、焼き物を成型する石膏型を水平に分割し、組み合わせを変えることで多様なバリエーションを可能にした器。「ピント(写真・上右)」は、複数の粘土が混ざる前の表情を楽しむ器。「絵を描く器(写真・下)」は、鉛筆の芯が陶器であることに着目してつくられた、まさに絵を描ける器。
■rabbit hole|ラビットホール
リンゴ形の鉛筆削りは実際に鉛筆を削ると、リンゴの皮のように鉛筆の木の皮がむけて見えます。底が円錐形のグラスに注がれた水は、グラスがどのようにスイングしようとも常に水平を示す。この当たり前を面白楽しく気づかせてくれる逸品。右は長針と短針の回転軸が異なる時計。今何時? エーッと、と考えることが心地よい脳活性化ツールとも言えそうです。
■Dew|高橋良爾 田中章愛 / Vitro
光る水滴が光る波紋を広げる、時空の移ろいを感じさせるプログラム。コンテンツとは対称的に安定感溢れるプロダクトは、文化や歴史の重みさえ感じさせます。
同一の成分、香りで液体から固体まで状態や粘度の異なる基礎化粧品をラインナップしたスキンケアブランド。季節や肌のコンディションに合わせて選択できるラインナップは、自分に合ったアイテム探しを楽しめます。写真・下は適量にちぎって使えるペーパー状の、洗顔、シャワー、入浴時に使える、とてもクールな石鹸です。
■kup-eatable cup|Smile Park×米粉倶楽部(FOOD ACTION NIPPON)
米を細かく砕いた米粉からつくられた食べられる器。TPPによる米の自由化が問題視される今、これほど注目されるアイテムが他にあるでしょうか? 米の器は、使用する場所の乾燥具合に合わせて水分や使用時間を調整するなど、実用に当たってはちょっとした配慮が必要なようです。それでも、米の器でいただく米料理は、格別だろうなぁ!
■Shrine (Berlin Products)|Sigurd Larsen
BERLIN PRODUCTSとして共同出展のなかからShrine(神社?)と名付けられた引き出しをピックアップ。すべての引き出しには鍵がかけられ、とても安心感のある、次の暮らしのパートナーファニチャー?とでも言えそうです。
■HANGER tree/katan-koton|un-do design
文字通りにツリー状組み立てられたハンガーの集合体。どう使うの?って。見た通りに。さらに実用以外の使い方を考えると、ますます楽しくなりそうです。
■in the sky|二俣公一
緊張感?、リラックス感?。静かに心惹き付けられるきれいなモビールです。
TIDE MARKET
デザイナー本人から直接商品を購入できる出会いのマーケット。デザイナーにとってはマーケティングリサーチの場にも。
■Seed 01|seeds
東日本大震災以前に収穫されたにも係らず、植えることができなくなった菜種。この種を各地に蒔いて花を咲かせ、旗を立てるチャリティープロジェクト。リアル、バーチャル、両方で各地に旗を立てることができるそうです。
■shirt|3(san)
テーマは重ねる。和の柄、洋の柄、中国の柄を重ねて新たな世界観をつくり出したシルクプリントは、奇をてらわず、かといって退屈することもない、ちょどいい感じ。さらにタイやエプロンのようなパーツにプリントして、白いシャツと立体的に重ねることで、歴史的重層観さえ表現しているようです。大袈裟でしたが、本当、いい感じです。
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