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2011.10.26

UIA2011東京_その1 クリスト作品とブータン首相の「国民総幸福量」

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過去の関連記事:02■次の暮らしのデザイン
photo: Tranlogue  text: Kazuko TOMOYORI

2011年9月25日(日)-10月1日(土)、東京国際フォーラムと丸の内地区において、世界最大級の建築イベント「世界建築会議」が日本で初めて開催された。スイス・ローザンヌで1948年に初めて開催されてからほぼ3年に1度、世界の各都市で行われ、今回24回目を迎える。
主催者のUIAによると、今大会には国内登録者が3200人、海外からは1900人が参加。また、市民プログラムとして開催されたオープンなプログラムには、のべ10,000人以上が参加したと発表があった。
プログラムは、メインテーマ「DESIGN 2050」、その中に3つのサブテーマ「環境」「文化」「生命」を設け、企画・展示が行われた。
トランローグでは5つのテーマセッションを中心に基調講演やトークセッションを取材した。ここでは3つの基調講演のうち初めの2つをリポート。

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開会式には、天皇皇后両陛下もご臨席。国土交通副大臣、石原慎太郎都知事。基調講演のスピーカーとして、芸術家のクリスト氏、ブータン王国の首相ジグメ・ティンレー氏、日本の建築家槇文彦氏らが、壇上に並ぶ。

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開会式だけはものものしい警備の、メイン会場フォーラムAのセキュリティチェック

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国際フォーラムの吹き抜け通路には、世界の有名建築をグラフィック化したパネルを展示

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吹き抜け通路には、特設のシンポジウム会場も設置

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造形作家・MacAdamさん、堀内紀子さんによる一体化されたナイロンロープ・ハンモック構造による「張力体験ネット遊具」。カラフルな色と個性的な造形が、来場者を引きつける。

76歳のバイタリティ溢れたアーチスト
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1935年ブルガリア・ガバロフ生まれの芸術家クリスト氏によって、クリスト・アンド・ジャンヌ=クロードの作品がスライドによって紹介された。なお、パートナーのジャンヌ=クロードは、2009年に亡くなっている。巨額なプロジェクト費用は、クリストの描くドローイングやコラージュ作品などで賄われ、美術館や政府、企業などからの援助を受けることなく進めている、というからやはり偉人です。なぜ彼が建築フォーラム開催の先頭を切って講演したのか。それは彼のプロデュース能力と手法には、建築界にとって見習うべきものが多いからだろう。

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1991年に茨城県里美村、日立市、常陸太田市で行われた"Umbrella Project"のドローイング。

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1983年アメリカ、マイアミ付近の島々の「囲まれた島」。

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1985年フランス、パリ・セーヌ川にかかる最古の橋の「梱包されたポン・ヌフ」。

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1977年から進行中のアラブ首長国連邦のプロジェクト「The Mastaba」。ドラム缶を幅300メートル、高さ150メートルに、ピラミッドのように積上げる。オイルの国UAEで、石油のドラム缶を積上げる象徴的で興味深いプロジェクト。無骨で圧倒的な迫力と同時にどこかはかなげな美を感じるのは私だけだろうか。

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1992年から進行中のアメリカ「オーバー・ザ・リバー、コロラド州アーカンザス川のプロジェクト」。

会場がスタンディング・オベーションに湧いた「国民総幸福量」
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「サスティナブルな幸福な社会のための建築」と題して、ブータン王国首相のジグメ・ティンレー氏が自国の開発コンセプトである有名な「国民総幸福量」の紹介とともに語った。Gross National Happiness(GNH)は、1972年にブータンの第三代国王によって、提唱され、国民の幸せは、GDPのような金銭的・物質的豊かさではなく、精神的な豊かさがどのくらいかで量るというもの。ブータンは、九州とほぼ同じくらいの面積に、約69.6万人が暮らすチベット仏教の国で、中国とインドの二つの大国に囲まれている。農業が中心でその他には観光業。そしてヒマラヤ山脈の豊富な水の水力発電による電力は、インドに輸出されている。
第4代国王は「物質的に豊かであることが必ずしも幸せではないが、幸せであると段々豊かだと感じるようになる」と述べている。2004年には、GNHの運用化に向けた国際会議が開かれ、国際的な幸福のネットワークが形成され世界的に注目を集めている。
講演の冒頭、ティンレー氏は「幸福というのは、非常に深刻なシリアスな問題なんです」と語り始めた。そして「建築家は、究極の物語の語り部なのです。人間の物語は変化の物語です。希望の物語です。そして、夢、破壊と再生の物語なのです。しかし、最近私たちが経験している変化、その殆どが、無神経で馬鹿げた行為による残念な結果ばかりです。頑固に物質的な富ばかり追い求めてきたばかりに、その生存すら危ぶまれる世界となってしまいました。常に経済成長を追い求め、飽くなき欲望を満たそうとすることによって自然が持っていた、生命維持装置のその機能も破壊し、今生き残っているものも長く続くことはないでしょう」と続けた。
GNHを国策として掲げるブータンでの開発においては、
1所得の配分
2教育の達成
3保険・医療
4時間の使い方とその管理
5心理的幸福
6地域の活力
7文化の多様性
8環境の再生
9良い統治
という9つの指標を用いて点数化して評価し、マイナスの案件は実行されないというものだ。そして、2007年に行われた国勢調査では、国民の9割が「幸福」と回答したという。
氏のその話ぶりは、穏やかで、聞く者の気持ちをとても温かく包むようだった。また熱く語られる「幸福論」を聞いた聴講者は、講演の最後には、聴講者は次々と立ち上がり、会場はすぐにスタンディング・オベーションで一杯になった。私たちが会期中にスタンディング・オベーションを目撃したのは、ここだけだった。

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次回は5つのテーマセッションと2つのトークセッションをリポート。お楽しみに!

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