稲刈り体験で実りの秋、自然の恵みを満喫!


カテゴリー:08■ワークショップ Workshop 01 米作り
photo: tranlogue associates text: Shizue INOUE
収穫祭のメインイベントは、イタリアンレストランのシェフによる美味しいお米料理の数々と、濁酒、スパークリング濁酒を堪能する事。しかし、稲刈りはもちろん田んぼに入るのも初めての私は、稲狩り体験ができる事もメインイベントと同じ位、楽しみにしていました。
田んぼに入る前に、まずは2週間前に既に稲刈りを経験した他の参加者に、刈り取った稲の束ね方について手ほどきを受けました。これは、この後オダ掛け(ハザ掛け)による稲の自然乾燥をするために必要な手順です。
1)藁を4〜5本地面に置き、その上に刈った稲を4〜6株ほど乗せる。その際、藁が稲の根元から約20㎝の所にくるように置く。
2)稲を藁で束ねて片結びをし、その後、藁の両端をひとつにまとめてこより状にねじり、ねじった部分を束ねた藁の輪の下へ少しくぐらせたら完了。

この方法で他の稲も束ねていくと、藁が細くて弱いせいか、片結びをする際すぐにちぎれてしまいました。悪戦苦闘していると、参加者の一人、ペルー出身のソニアさんが、片結びをしなくても、藁で稲をしっかり束ねておけば、直接こより状にねじって、それを束ねた藁の輪の下へくぐらせるだけで大丈夫!と裏技を教えてくれました。早速試してみると、ほどける事なく良い塩梅に束ねる事ができました。後日分かった事ですが、この方法だと、オダ掛け(ハザ掛け)をして、稲が乾燥するまでの間、掛け外しをしなくて済めば何の問題もないのですが、雨や台風の日に軒下へ移すなど何度も掛け外しを繰り返すとスルスルとほどけてしまう為、束ねる際はやはり片結びをするのが基本のようです。
いくつか稲を束ね終えた所で、稲刈りも体験してみようと、既に田んぼに入って作業している人に声をかけました。
「稲刈りをやってみたいのですが、少し代わっていただいてもよろしいですか?」
「どうぞどうぞ是非やって下さい。」
ひとしきり作業を続けて足腰が疲れ、ちょうど休憩したいと思っていた所だったようで、快く代わってくれました。
稲刈りに使う鎌を受け取り、バトンタッチ。稲は穂を垂れ、収穫を今や遅しと待ちわびています。


普段、職業として米作りをされている他の参加者に稲刈りの仕方について教わります。
「足をとられますから、気をつけて田んぼに入ってきて下さい。」
田んぼに一歩二歩と足を踏み入れると、膝下10㎝位まで泥の中に足が沈みます。しかも足がなかなか抜けず、少し大きめの長靴を履いていた私は、長靴だけが泥の中に取り残されそうになり苦戦しました。両手を添えて足を引き抜き、ようやく前進。後から分かった事ですが、田んぼの中で最も水が抜けていないエリアにまず踏み込んだようです。他の場所では水がかなり抜けて、歩き易い部分もありました。2週間前にも稲刈り体験した他の参加者によると、その時の方がさらに足の沈み込みが深く、全体的にあまり水が抜けていない状況だったそうです。
引き続き、前進するのに苦戦していると、「刈った稲の跡を歩くと良いですよ!」とのアドバイスをいただきました。なるほど、しっかり根を張った稲の根元部分が体重を支えてくれるので、さほど泥に沈む事なく、先ほどとはうって変わってスムーズに前進できます。
「まず、稲の根元部分にガサガサと鎌を入れ、ヘビがいない事だけ注意して下さい。あとは、稲を束ねて持って、鎌の刃先を根元にあてて手前に引くだけです。刈った稲を手に持ったまま、この作業を3回分ほど続けたら、傍らに刈った稲を積んでいって下さい、稲を田んぼの脇へ運ぶのは私がやりましょう。」刈り取った稲は、おおきなケースに入れて、ある程度まとまった所で運んで下さったのですが、歩くたびに泥に足をとられる為、実はこの田んぼの脇へ運ぶ作業が大変なようです。おいしい所だけ担当させていただく事に申し訳なさを感じつつ、いざ稲を刈り始めると、とても楽しくて止まらなくなってしまいました。

(●写真)刈り取った稲を田んぼの脇へ運ぶのは想像以上に大変。この後、効率性を考え、刈り取った稲がある程度まとまってから、ケースに入れて運びました。
鎌の刃先は細かいギザギザ状になっており、のこぎりと同様、引いて使用するものだそうです。それほど力を入れなくてもスッと鎌を引くだけで、気持ち良く刈る事ができました。

田んぼに棲む、沢山の生き物に遭遇するのもまた面白い体験でした。大小さまざまなクモやカエル。キング・オブ・カマキリと呼べるような貫禄のある大きなカマキリ。これらの昆虫は害虫を食べてくれる、人間にとってのコンパニオン・アニマルです。蛍の幼虫の餌として有名なカワニナという貝も見られました。
今回は、参加者が大勢いた事もあり姿を潜めていたのかもしれませんが、この田んぼには他にも、絶滅危惧種のタガメやゲンゴロウ、エビやタニシ、トンボ各種、田んぼの昆虫を狙ってシラサギなどもやってくるそうです。また米を食べるために農家から最もやっかいがられているカメムシ、他にも挙げればキリがないほど無数の生き物が見られるようです。
完全無農薬の田んぼは、収穫したお米をいただく私たち人にとっては勿論、そこに集まる虫や鳥などの生き物にとっても最高の自然の恵みなのでしょう。今回は、小・中学生の参加者も居ましたが、これだけ一つの場所で色々な生き物が見られるのは、子供にとっては勿論、大人にとってもワクワクする体験です。生き物図鑑片手に嬉々として田んぼと触れ合うのもまた一興だと思いました。

稲刈りに参加した皆さんは、途中水分補給の為に多少休憩したものの、皆一様に稲刈りに没頭していました。多人数で行った為、この1日でかなり作業がはかどりましたが、残念ながら全てを刈り終える事は出来ませんでした。残りの収穫は翌日に持ち越しです。
残りの時間で、今日刈り取った稲を全て藁で束ねてオダ掛け(ハザ掛け)していきます。


オダ掛け(ハザ掛け)による稲の自然乾燥は、竹で組み立てた土台に藁で束ねた稲を掛けていきます。稲の束は、根元でクロスさせるように二つに分けて竹に掛けていきます。次々に掛けていくと、稲の重みで竹がたわんでくる為、竹の脚は、稲を掛ける部分、つまり横に通した竹1本分の長さに対して、途中2カ所、支柱で支える必要がある事を、今回も指導にあたって下さった東条さんが教えて下さいました。
稲を全て刈り終えると、途端に下半身に心地よい筋肉痛が広がっている事に気づきました。その日の夜はぐっすり気持ち良く眠る事ができました。
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