東京で出合った心を満たすおもてなし
Vol.1 ザ・リッツカールトン東京
東京再開発の中心、六本木にある「世界最高の感動サービス」を謳うホテル、ザ・リッツカールトン。
ホテルやホスピタルの語源がホスピタリティであると言われるが、ザ・リッツカールトンがホテルというライフスタイルの提供を通して極めるおもてなしとは、一体どのようなものか?
トランローグが加盟する(社)日本マーケティング協会が主催する「ザ・リッツカールトンを体験する会」に参加して、レストラン、客室を見学・体験し、さらに総支配人から哲学について伺った。
06■東京おもてなし
(text+photo:MotohiroSUGITA)
コバルト・ブルーのゴブレット
すれ違うすべてのスタッフの快活な挨拶に迎えられ、昼前に集合場所の会議・宴会場に到着した。
テーブルにはステーショナリーが準備され、青色の夜景が印象的なブロッシャーと、同じく美しいコバルト・ブルーのゴブレットに水が注がれ、また、脚付きの菓子皿にグリーンのミント・キャンディーが用意されていた。
これらも、ゲストが講演会で数時間を快適に過ごすための、おもてなしの表現なのだ。
ところで、コバルト・ブルーのゴブレットには、こんな逸話があるそうだ。ザ・リッツカールトン ボストンのオーナーが、コバルト・ブルーのチェコ製のクリスタル・シャンデリアを注文した際に、それによく合うゴブレットをデザインしたのが起源という話。
受講者用のテーブル・セッティング。チョコレートの香り、シナモン・ホワイトペッパーなどを加えたザ・
リッツカールトン東京オリジナル・ブレンドティーは、至福のリラクセーションを演出してくれる。大人も子どもも虜に。
「アラカルト」の発祥地はザ・リッツカールトン ロンドン
オリエンテーションを受け、総勢50名ほどの参加者は、45階のレストランへと移動した。
流石に50名にサービスするのは並大抵ではない。また、参加者は日本を代表する企業の、役員やサービスのプロばかりだ。スタッフは行く先々で呼び止められ、メニューについて質問攻めにあった。
スタッフは、大人数に滞りなく皿が行き渡ることを第一に考えながらも、一人一人の質問に対して手を抜かず丁寧に答えた。
なお、「アラカルト」のコンセプトは、ザ・リッツカールトン ロンドンのシェフ、エスコフィエにより生み出された、とのこと。
研究会のためにアレンジされたランチ・メニューのメイン「雛鶏のロースト、クミン風味、ワイルドライスピラフ、セージのジュ」。雛鶏とワイルドライスの食感の対比、2つをまとめるソースが面白くヘルシーな逸品。
ダブルベッドもリッツが起源
デザートとコーヒーをいただくと、参加者は3グループに分かれて客室へと案内された。
一泊6万8千円のタワーデラックスと11万円のエグゼクティブ・スイートの2タイプだ。
いずれもヨーロッパの落ち着いたやさしい印象のインテリアの中に和を取り入れたスタイルだが、それらが違和感なく調和していた。
ところで、ダブルベッドは、公共の場ではシングルベッドで別々に眠るという当時の常識を覆し、セザール・リッツがパリのリッツに導入したのが始まりとのこと。
2方向の窓から東京を見晴らすエグゼクティブ・スイート。玄関ホール、ベッドルーム、リビングがそれぞれ独立。洗面、シャワーは2セット。エスプレッソ・マシンや高音質スピーカーなどの備品も充実。
お客様に忘れられない感動を与えることが使命
総支配人リコ・ドゥブランク氏自らサービスの真髄について語っていただいた。
「私たちのモットーは『紳士淑女におもてなしする私たちも紳士淑女です』。つまり、常に人を気持ちよくさせるのが紳士淑女です。その最高のお手本がオランダ女王です。女王は、ヨーロッパとは文化の異なる地域から訪問されたゲストを招いて晩餐会を行いました。乾杯の際、ゲストはフィンガー・ボウルの水を飲み干してしまいました。列席者は皆驚きました。しかし、女王は顔色一つ変えずフィンガー・ボウルの水を飲み干し、ゲストに一礼しました。それを見ていたすべての列席者は、女王に習い、乾杯しました。紳士淑女は決して人に不愉快な思いをさせません」
「今朝、世界的セレブがこのホテルにやって来ました。ところが彼女は移動のため、おそらく到着前に彼女が何よりも楽しみにしていた筈のあるものを見ていません。そこで、スタッフは考え、それを彼女に見せたのです。すると彼女は、私たちの目の前でジャンプして喜んでくれました!」
(オフレコにつき、これ以上詳細は書けません。)
これらが世界最高の感動サービスを目指すザ・リッツカールトンのおもてなしだ。
なお、ザ・リッツカールトンのサービスは、お客様に満足いただくためにスタッフ全員が一人一日当たり20万円の決裁権を与えられていることで有名。
ドゥブランク氏は自ら笑いを堪えて悪戯っぽく語った。
「皆さんにお願いです。どうか私のスタッフに20万円を使わせないようにお願いいたします(笑)」
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