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2007.03.10

スローな家づくり3ー工事/ 前編

希望通りに進まなくて当たり前。人任せにせず、ひとつずつ解決

 '01年3月に土地購入を申し込んでから2年、ようやく着工の運びとなった。土地を手配してもらった不動産会社の大谷さんに建築監理をお願いし、棟梁の高梨さんに木造軸組構法で建ててもらうために、私たちは自ら設計図を描き、彼らと打合せを重ねた。また、私たち家族3人は自ら敷地にロープを張って建物配置を確認し、配置や間取りを修正した後、'03年5月に最終図面を彼らに渡し、最終見積りをもらい、5月下旬にいよいよ基礎工事を開始した。当初から梅雨時の工事には不安を感じていたが、この年は例年になく長梅雨で、この原稿を書いている年末まで雨の多い1年となった。同時期に横浜で自宅を着工した友人も梅雨のせいで大幅に工事が遅れて予定が狂ったと嘆いていた。しかし、ベタ基礎を打った頃、梅雨の晴れ間の初夏の陽射しはさすがに強烈で、みるみるコンクリートが乾いていくのがわかり、頼もしく見えた。あいにくの悪天候のため、工事はゆっくりと進行せざるを得なかった。これは建築監理には好都合な面もある。家族3人で毎週末、現場に行っては1工程1工程を確認できたからだ。ある時は基礎立ち上がりに設置した通気口の隙間を塞いでもらったり、またある時は腐食を防ぐためにヒノキを使ったサンルーム角の柱を支える基礎を補強してもらったり……。基礎の段階から実に丁寧に進行した。ハウスメーカーの営業に応対したことのある方なら見たことがあるかも知れない。彼らが持参するライバル会社の手抜き工事の現場写真ファイルの多くは基礎、つまり床下の見えない部分のようだ。基礎は文字通り家の礎である、基礎こそ現場監理を徹底したいものだ。
 私たちの現場でも実際にこんなことがあった。基礎の鉄筋の本数が足りなかったので大谷さんに確認したところ、「現状の本数でも土台や柱梁が頑強なので心配ないが、私自身が納得できない」という回答で、すぐにやり直してもらった。
細かい現場調整はあったものの、概ね順調に進行し、7月の第1週にいよいよ棟上げとなった。当日は梅雨時には珍しく朝から快晴だった。朝10時頃、私たちが現場に着くと、柱を建て梁を架け始めるところだった。小さな家なので3人ぐらいの作業になると思っていたが、大型のクレーン車を使って、総勢5名で作業していた。私たちはデザイナーという職業柄、勢いのある現場の雰囲気を逃すまいと、無心にカメラのシャッターを切った。すると、棟梁の高梨さんはテレビ出演の経験があり、写真はカメラを向けられると動けなくなるから困っちゃうな(笑)」といって重労働で疲れた職人たちを和ませた。しかし、そんな余裕とは裏腹に、彼は母屋(もや)を1本手配し忘れていたことに気づき、慌てて木材店に電話したのだった。現場で感動したのは、真壁をつくり建物を頑強にする横胴縁の合理性と、建物のど真ん中に立ち上がった8寸(約24cm)の大黒柱だ。なお、当初は1尺を予定していたが「そんなに太くなくても大丈夫だよ」と高梨さんにいわれ変更した。

 木材の値段は、高額といわれるヒノキでさえも1本が数千円と安いため、木材でコストダウンを図る必要はないだろう。しかし、さすがに大黒柱だけは1本4万5千円と桁違いに高かった。なお、木材に手で鉋掛けしたり細工をするなど、手間を掛けると値段は上がるから注意したい。棟上げが終わり、後日屋根工事が始まった。自然派住宅を目指す私たちは、昔ながらの粘土を焼いた瓦を使いたかったが、予算の都合でゼロアスベスト軽量厚物瓦(12mm)とした。これは一般的なセメント瓦よりも厚く、予定していた屋根工事業者が持っていたカッターでは切れず業者が代わったが、屋根葺きが遅れ長雨の影響が心配された。また、私たちが描いた設計図と棟梁が発注した木材との誤差のせいで、サンルームから立ち上がる小屋裏の壁の高さが低くなり、予定していた窓がはまらないことがわかった。しかし、無理に小さな窓や換気口を開けて通風を優先させ、断熱性能を損なうより
も、厚い壁で塞いで断熱性能を向上させることにした。小さな問題は多々あったものの悪天候以外は概ね順調に進行していたが、サンルーム天窓だけはサッシ業者と意見が食い違った。ガラスにした場合の地震によるひび割れを心配して、弾力性のある安価なポリカーボネートを支給する予定だったが、結局は網入りの強化ガラスで決着した。耐久性についても議論したが、本音は「材料を支給されたんじゃ儲けが少ないから手を引く」という考えだったようだ。しかし、1日も早くサンルームに屋根を架けないことには、雨が吹き込み続けるため、最終的にはサッシ業者のいう通りにした。着工から様ざまな施工業者にお世話になったが、費用について特に感じたことは、木材の値段と大工工賃の安さだった。この安さのために国内の林業が衰退して森が荒れ、外材に頼ることになり、腕のいい大工が減少しているとすれば、悲しむべきことだ。しかし、建主にとって安いことはうれしい限りではないか。木をふんだんに使った高性能な住宅を伝統の木造軸組構法で建てる家づくりを、もっともっと再生、進化させるために、私たちは家づくり実験と検証、リポートを続けていきたい。


「東京駅から1時間、200坪の土地。土地+建物で1000万円」
を目標に始めた家づくり。ここまでの費用は約980万円。
果たして、どこまで目標に近づくことができるのか……。

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