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2007.03.10

スローな家づくり4ー工事/ 後編

大切な家づくりの総仕上げ。キーワードは、“シンプル&スマート”

 '03年5月に着工したが、長梅雨に冷夏と雨の多い悪天候が続いたため木工事が遅れ、「まだか、まだか」と設備工事関係者をやきもきさせた。毎週末現場を訪ねた私たちも1日で終わる棟上げのスピードに対して内外装の仕上げに掛かる時間の長さには、諦めにも近い気分になっていた。親子3人、新居で夏休みを過ごす夢が叶わないことがわかったからだ。そして、ようやく9月初旬から電気、ガス、水道工事を本格的に開始することができた。照明はLDKにカフェ風のペンダント、サニタリーと屋外はスクエアでシンプルな防雨防湿ブラケットで統一し、板間とサンルームは長寿命の電球型蛍光灯を購入。このように設備照明は最少限にし、明るさが不足する場合は、スタンドで対応することにしたが、防犯灯だけは高性能で高額な器具を選択。
  そして、照明器具と手持ちのエアコンや洗濯機、BSアンテナを電気工事業者に支給し、取り付けてもらった。木工事の最中から床や壁の中に配線するため電気工事は同時進行していたので、器具の取り付けは間もなく終了した。今回の工事で最も難航したのが井戸掘りだ。この地域では、深さ約38mまで掘らなければ水量の豊富な地層まで到達しない。浅井戸では水が涸れる心配が付きまとう。地元の人から聞いた話では、深井戸でも江戸時代の大地震で一度涸れたことがあるそうだ。もっとも大地震がくれば、上水道も断水するから気にしないことにした。また、この井戸水には鉄分が含まれ、飲料不可能なだけでなく、衣類を変色させるため洗濯にも適していない。そこで井戸水は除鉄滅菌装置を付けて上水道と同質の水に変えて使用する。なお、分厚く硬質な岩盤をくり抜いて100mも掘れば、非常にきれいな水が出るそうだが、そこまで必要ないと判断した。今回は何度か井戸を掘り直した。一度掘った井戸を蛇口に繋がず使わずにいたため、水が出なくなってしまったり、井戸の途中から雨後の濁り水が入り込んでしまったりと、ライフライン確保の難しさを痛感させられた。だから、蛇口から勢いよくきれいな水が出たときの喜びは井戸水ならではだった。そして、除鉄滅菌以前の井戸水を地元保健所に持ち込み水質検査を行い、安全を確認した。次に合併浄化槽を設置する際、地元用水組合の許可が必要といわれた。農村には用水組合協力金という用水保全のための積立金があり、当地では15万円と高額だった。予定外の出費だが、当地が集落の最上流にあり、目の前の田では上質な米をつくり、ホタルや沢ガニが生息していることを考えて、環境保全のために気持ちよく支払うことにした。そして、コンクリートブロックで母屋から分離したサニタリーに、今流行のシンプルでスタイリッシュなバスタブやシンク、水栓金具を取り付けるといよいよ家らしくなってきた。
  今流にシンプルにまとめたい場合に注意したいのは、とにかく白にこだわることだ。工事関係者は「白は汚れが目立つからベージュがいいよ」と勧めるが譲ってはいけない。私たちもサニタリー設備はすべて白とし、壁は白、床はこれらを引き立てる黒で防水防腐効果のある化学塗料を自ら塗装した。設備選びで楽しいのがキッチンだ。キッチンは業務用設備にしたが、キッチンスペースを含めて1階の大部分をコンクリートの土間としているので重量のある業務用キッチンも置ける。オールステンレス製なので汚れを気にせず調理に専念できる点もうれしい。また、業務用オーブンレンジとプロパンガスの組み合わせで強力な火力が得られる点も魅力だ。多くの設備についていえることだが、定価はあってないようなもの。インターネットで購入すると、オーブンレンジ、シンク、作業台の3点で定価約46万円の商品が約25万円になった。木工事完了後、断熱効果と桟を隠してスッキリとした見栄えにこだわり、和紙を表裏両面に貼った板間用の障子を取り付けて建具工事は完了した。なお、料亭などで見かける周囲の木枠まですべてを和紙でくるんだ「太鼓貼り」とすれば、なお一層スタイリッシュだが、私たちは汚れに対して神経質になりたくないので、そこまではしなかった。発注した工事が次々に完了していく中、私たち親子3人は毎週末現場に行って自ら塗装工事を行った。母屋の室内外には、健康に配慮しながら防虫効果のある天然塗料として近年再評価されている柿渋を塗装した。柱梁が露出して野暮ったいといわれる真壁でも、柿渋に白ベンガラを混ぜて塗装しているので、クールに仕上げることができ、木造軸組の真骨頂である調湿機能を損なわない点は、構法と塗装の最善の組み合わせといえるのではないか。
  また、大量の廃材を廃棄処理することなく薪ストーブの燃料とすることにした。大小様ざまな木材が敷地内に山積みされていたので、それらの汚れを落としてからサンルームに運び、並べて乾燥させた。さらに乾燥後の木材を薪として適当な大きさに丸鋸で切断した。一連の作業は毎週末に行い約3カ月も掛かったが、おかげで薪の量は一冬分は確保できた。丸ごと木で建てた家だからゴミもほとんどが木だ。だから驚くほど廃棄処理の必要なゴミが出なかった。木の家はそれ自体が健康的なだけでなくゴミも有効利用できる、とてもエコロジカルで経済的な建物といえる。なお、いずれは近隣の放置林の倒木を薪用の木材に利用させていただくなど、もっと地域環境と係わっていきたい。知恵と努力の結果、土地+建物の総費用は約1150万円。目標より150万円オーバーしたものの概ね合格ラインといえよう。また、スローな家づくりも本連載のために工事後半はスピードアップしたつもりだ。読者の皆様には、これを参考にマイペースの家づくりを存分に楽しんでいただきたい。
(月刊雑誌「NewHOUSE」 ニューハウス出版発行2004年1月号〜5月号掲載より)
写真 http://www.tranlogue.jp/media/media_work/slow1.html

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